イミテーション |
※新羅と臨也が会話しているだけ 「臨也」 「何、新羅」 「最近静雄が強くなったようなんだけれど、それって君のせいだろ」 「……はあ? 何言ってんの、急に」 「肋骨が4本、肩甲骨1本、下顎骨と頭蓋骨にもヒビが入ってた。それにいくつか関節もやられたみたいだね。これは静雄でもいくらなんでもやりすぎだ。今までは、投げ飛ばしてそれで終わりっていうことが多かった。人体に対して直接攻撃するようなことはなかったんだよ」 「ただシズちゃんが化け物に余計に近づいて行っているっていうだけの話なんじゃないの。どこに俺が関わってくるっていうわけ」 「……臨也、最近、カポエイラを始めたようだね」 「まあね、あの体さばきはシズちゃんとの喧嘩で拳をよけるときに使えそうかなって思ってさ。で、そのこととその怪我とどう関係するわけ」 「まあ、聞きなって。カポエイラの前は合気道。そして柔道もだろ? あとパルクールもそうだった」 「だから? 俺がそんな武術をシズちゃんに教えているんだって言いたいの?」 「そうだよ」 「どんな理由でそんなことを言うのかなあ? 俺はシズちゃんと殺し合いの喧嘩しかしていないと思うんだけれど。そんな風に言われるのってすっごい心外だなぁ」 「静雄は君との喧嘩の中で、無意識にその動きを模倣して覚えているんだ。学習しているんだよ。そうして学んだ動きが君以外との喧嘩の中でも使われているんじゃないのかい。 静雄はいつも物を投げ飛ばしてばかりで格闘術なんて習っていない。こんな風に人体にダメージを与えるような動きはしたことなかったんだよ、今まではね。本来ならこんな酷い怪我を相手に負わさせることにはならないんだ」 「その証拠は? ただの憶測でしかないんじゃないの」 「それこそ、君のその怪我が証拠だよ。 最初の頃よりもましだけれど、この頃また酷くなってきてることを自分でも気が付いているだろう。 君がパルクールで逃げようとしたところで、あるいはカポエイラで避けようとしたところで、静雄は追いかけて君を殴っている。それこそ、パルクールもどきやカポエイラもどきでね」 「だから? 俺が喧嘩をしたところでシズちゃんには絶対に勝てないとでも新羅は言いたいわけ?」 「別に君が静雄にいくら殴られようが僕は興味ないよ。ただ、臨也、君、わざとだろ」 「何が?」 「とぼけないでくれ。わざと静雄の前で技を使っているんだろう。そうして静雄に覚えさせようとしているんだろう」 「ハッ。何を好き好んでそんなことを。俺がシズちゃんに殴られたいとでも言うの」 「似て非なる感じかな。君は前から言っていたじゃないか。静雄が怒りを抑えるようになるのは退化でしかないとか、なんだかんだって。こうやって人間に対して攻撃的になっていくことは、君の言う進化にでもあてはまるんじゃないのかなって思うんだけれど」 「……じゃあこのままシズちゃんが俺のせいで化け物に近づいていくことを新羅は止めようとするの? 首無しを愛している君が、シズちゃんにまでちょっかいを出そうっていうのかなぁ」 「静雄はただの友人でしかないよ。それは、静雄が化け物だろうが人間だろうが変わらないさ。 ……ただね、静雄との喧嘩で負った傷は、ウチに来るんじゃなくて普通に病院に行ってくれないかな! ちょっと前まで怪我が少なくなってきてたのに、また怪我の数が多くなってきて、本当に迷惑なんだけど」 「ちゃんと治療費を払っているからいいじゃない」 「普通の10分の1以下のね。それにほとんどは踏み倒すし。 私は愛するお嫁さんとの幸せな同棲生活を目指してお金を貯めなきゃいけないんだから、君の存在ってものすごーく邪魔。本気で邪魔。あと静雄との喧嘩もやめてくれたら一度に二人も無駄にお金を使う患者が減ってくれて助かるよ」 「俺のおかげで君の治療技術が上がってるんだろ」 「まったくもって不本意で、ありがた迷惑だけれどね!」 小説top |