角の生えた日 |
朝起きたら角が生えていた。 鏡を見れば確かにそれは額の左右に二本の突起が出ており、俗にいうなら、というよりも印象から素直に言葉を当てはめるならそれは角だった。肌色より少し白っぽい。硬いかと思ったが触れば普通に肌の様な触感だった。少し乾いている。つまんだり引っ張ったりして見ても額から抜け落ちそうにはない。 まいったな。静雄は鏡を見ながらそう思った。まいったな、髪の毛で隠れてくれたらいいが。金色の髪を弄るがあまり長くもないそれは、幾ら弄ったところで一センチほどの突起に押し分けられる形になった。これでは少しでも風が吹いたら容易にその異物が外から見えてしまう。 仕方がないので昔買った野球帽をかぶっていくことにした。職場にかぶっていくのにはるかに不釣り合いだが、上司には説明したら多分分かってくれるだろう。帽子のつばが角に当たって違和感を覚えるけれども、それに無視をして静雄は職場へ向かった。 (ああ、とうとう俺も化け物になってしまった) 小説top |