公園の隣の道を歩いていると「わっ」と驚いたような声が後ろから聞こえた。反射的に振り返る。そんな素っ頓狂な声を出す彼は珍しい。見れば足もとを凝視していた。その視線をたどって自分も彼の足もとを見れば羽をばたつかせた蝉がいた。「ただの死にかけた蝉じゃないか」何をそんな驚くようなことなのかとからかう様な音を込めればそれに気がついた彼がこちらを不服そうな顔で見た。「急にこいつが動いたからだ」蝉はまだ羽を震わせていた。けれどもう空を飛ぶ程の力は無いらしく、アスファルトの上を小さな体で醜く這っていた。「もうすぐ夏が終わるのか」それを見て彼はつぶやいた。それは七日目の蝉の様に力のない声で「秋だっていい季節だろう」と思わず返してしまっていた。「そうだな、秋も悪くない」顔を緩ませた彼を見てどことなくノスタルジィな感傷を思うのはきっと秋の気配の為だろう。こうしてまた一つの季節は去っていく。








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