ウォール・ラン



やばいな。脳内で赤信号がともる。

これは、やばい。

いつになく殺気だった彼の手には長物。つまり道路標識が握られていて、その長さ約二メートル、なおかつ彼の腕の長さも含め、三メートル弱といったところ。そして今の距離が大体五メートル。ちょっとでも足を緩めたら射程圏内に入って終わり。普段だったら段差でもなんでも利用するのに、運が悪いのかこのまま進んでも袋小路だという事を俺は知っている。最近彼との追いかけっこをしていなかったから土地勘がなまっていたのだろうか。目前には灰色の壁。奇跡的にも、何とか越えられそうな高さだった。これがビルの壁だったりしたらまったく終わってる。そのまま走る勢いを利用して踏み込む。

「待てこらああああぁぁッ!」

後ろから声が聞こえる。その長物を彼に投げられたら一巻の終わりだな。そんなことを頭の片隅に思いつつ、壁を蹴り上げて、そうして二歩目をつくと同時に片手を壁の上に引っ掛けた。ぎりぎりセーフ。体を引いて押し上げればその下に衝撃が走った。思わずバランスを失いそうになる。シズちゃんが標識を投げたらしい。後ろを振り返らずにそのまま壁向こうに降り立った。
さあ、彼はこの壁をどうやって登るのだろう?









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