雨というもの |
グラウンドの中央に立っている化け物は怪物というよりも濡れ鼠に近かった。 白いシャツは水浸しで不快であるはずなのに、雨なんて降っていないと言うのかただ立ちつくしている。乾いた校舎の中からはその顔は伺えない。霧にくすんだ金髪でその人物が分かるというものだった。あるいは、足もとに転がっている捻じれたサッカーゴールで。 いつもの事だ。 臨也のささやかな悪意と純粋な好奇心によって導かれた人間達と喧嘩を繰り広げた彼は、いつものように、その暴力で排斥した。 いつもの事だ。 その両肩が雨に濡れている事以外は。 泣いているのかなぁ。 なんてふとそんなことを思った。 それは、一人たたずむ化け物に対しての哀れみにも似ていたかもしれなかった。 小説top |