怪物と恋 |
ぱた。 音を立てて彼は手を払いのけた。嫌に軽い音でそれはとても場の空気に合わないものであった。 永遠に届かない。 そう分かった。分かりきってしまった。彼はいつも自分のような醜い怪物を選ぶことは永遠にないのだと、分かってしまった。いや、そんなこと分かりきっていることだった。化け物だ、化け物だと言われることに反抗して突っぱねて跳ね除けていたけれども、自分だってそう思っていたではないか。化け物だと。人間ではないのだと。 ――あの美しい彼は、きっと自分を選ぶことはないのだと。 あ、ああああ、……。 しわがれた声が出た。怪物のように叫ぶこともできず、人間のように泣く事もできず、醜い化け物は、こうして朽ちていく。 小説top |