コラッジョさんに手を引かれ、たどり着いた先は1軒のかわいい外観をした家。カーテンの揺れる窓や玄関の扉に施されたガラスからは、淡いオレンジの光が漏れている。この家に住む家族は、素敵で幸せな暮らしをしているんだろう。直感でそう感じた。

「よし、じゃあ入るぞ」
「や、コラッジョさん、私まだ心の準備が」
「んなもんいらねぇよ」

んなもんって、大事だと思うんですが!なんと言っても今は巨人の侵入という大事件が起こったばっかりで、どんな家だって混乱しているはず。それに私なんだかんだ人見知りなんで「ただいまー」うそおおお

「パパ!おかえ…り?」

ぱたぱたとかわいい足音をたて私たちを迎えたのは、赤茶色の髪の男の子。ふんわりした笑顔を浮かべコラッジョさんを迎えていたが、私の姿を見た途端、ぽかんと口をあけた。知らない人間の突然の登場に、もしかしてびっくりさせちゃったのかな。私の胸に届くか届かないか、そのくらい小さな男の子は不思議そうに、あるいは泣き出しそうに私を見つめた。

「おかえりなさい、義父様の具合はどうだっ…」

次に玄関へ顔を見せたのは綺麗な女の人。コラッジョさんよりも落ち着いた金色の髪。透き通った白い肌。それに、ふんわり優しい空気を持っている気がする。なんて考えている間、女の人は小さい男の子と似た、くりんと丸い目で私をじっと見つめていた。

「そのお嬢さんは…?」
「公園に1人でいたから連れてきた。これからはおれ達の家族だけどな!」
「…要は引き取るってことね」

さっきとおんなじ笑顔でコラッジョさんは声高らかに宣言した。そんなコラッジョさんの背中には、赤茶髪の男の子が私をちらちら見ながら隠れている。ん?今コラッジョさん家族って言いました?ちょっと話が飛びすぎて、私も理解できてないんですがどうしよう。コラッジョさんと数回のやりとりを済ませた女の人は私の目の前にしゃがみ、「お嬢ちゃん、名前は?」と優しい笑顔を浮かべた。

「みょうじなまえです」
「なまえちゃん、辛いかもしれないけど、少しだけあなたのお話をしてくれる?」

そう言って、女の人は困ったような笑顔を浮かべた。私の話…、これまでどうやって生きてきたかってことだろうか。普通のような濃いような、なんとも言えない出来事も多いけれど、正直に話そう。

「はい。…私は、」






「…こんな感じです」

これまでの私の身の上話を、なるべくざっくり話したつもりだ。両親はおらず、施設に引き取られ育ち、ある男の子に助けられ一時期を彼と過ごし、そしてまた施設に戻り、今に至ります。はいざっくり。私の話を聞いた女の人は深刻そうに眉を寄せ、コラッジョさんは驚きを隠さずに口をぱかっとあけている。赤茶髪の男の子は、相変わらずコラッジョさんに隠れたままだ。

「なまえ、今までそんなことがあったのか…」
「あなた、知らないで家に連れてきたの?」

コラッジョさんの様子を見た女の人は、ため息に近い、少し深く息をはいた。こういう状況を雲行きが怪しいと言うのだろうか。やっぱりまた、施設に行かなければならないのかな。

「まあでも、あなたはいつだってそんな人だものね」

そう言って、女の人は私と目を合わせ優しく笑った。ゆっくり私に近より、女の人は私と同じ目線になるまで腰を落とす。既に新しい施設のことでいっぱいになっていた私には、女の人の行動がわからなかった。ぐんと近づいた女の人からは、ふわりと懐かしいにおいがする。

「なまえ。私たちの家にようこそ。これからよろしくね」

私の両手を優しく包みこみ、女の人は言った。その隣ではコラッジョさんがにこにこしている。女の人の言った言葉を理解したときには、驚きと嬉しさでいっぱいだった。

「私、いいんですか?」
「ええ、もちろん。家に女の子が増えて嬉しいわ」

女の人の瞳は、まっすぐ私を見据えてから優しく閉じられる。嘘偽りの見えない笑顔だと、本当に思った。コラッジョさんもこの女の人も、どうしてこんなに綺麗に笑うんだろう。どうしてこんなに、優しいんだろう。

「私はアルマーレ。この小さい息子はロッソよ」

女の人…、アルマーレさんによってコラッジョさんの背中から剥がされたロッソくんは、「もう、ロッソ!あいさつくらいしなさい!」私をきっと睨むとそっぽを向いてしまった。あれ、なんか嫌われてる?「ごめんなさいね、あのこ人見知りで」なるほど、そういうことですか。少し驚いたけど、それなら仕方がない。私はコラッジョさんとアルマーレさんへ体を向け、出来る限りの真剣な顔を作る。

「みょうじなまえです。よろしくお願いします!」

勢いよく頭を下げたら、コラッジョさんは「ったく、家族だってのに堅えよ」と言って笑う。コラッジョさんの笑顔を見て、私の顔からも自然と笑顔がこぼれた。

リヴァイ。私に新しくできた"家族"は、すごくあったかいよ。だから安心してね。記憶の中に残るリヴァイの顔が、少し笑った気がする。




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