2014/12/31
冬の音

冬の音

付き合ってから初めての冬が来た。

付き合って数ヶ月も経っているはずなのに、二人の関係は相変わらずで、友達の境界線より先を進んでいなかった。
そんなだから、ときどき思うことがある。今までの方がもっと自然に相手と接することができたんじゃないかって。

いつの間にか難しい関係になっちまったな


「ブン太」
「お、仁王」
「行こうか」
「そうだな」

誰もいなくなった教室で、のんびり片づけをしていると仁王が声をかけてきた。今日は一緒に帰ろうと約束していたから。
ブン太がマフラーを巻くと、仁王は教室のドアの方へ向かい、ゆっくりと閉めた。

「……帰るんだろい?」
「もちろん」
「じゃあ何で閉めて……」
「ちょっとな」

仁王はブン太のもとへ戻ってくるとブン太の前の席にある机に腰掛けた。

「なあ、気持ち聞かせて」
「……?」
「ブン太は何をしたい?」
「……とりあえず暖かいところに行きたい」

なんとなくはぐらかそうと言ったつもりが、仁王にはすっかりバレていたようで、ブン太の両手をそっと手に取った。

「あたためちゃる」

ぎゅっと握ってきた仁王の手は、不思議と暖かい。さっきまでポケットに手を入れていたからだろうか。
実を言うと教室の暖房がすでに止まっていて寒かったから、仁王の手が心地良かったのは内緒だ。

「俺の気持ち知りたい?」
「……何だよ」
「そうやね、」

仁王はそれ以上言わずにくつくつと笑った。
不服そうにブン太が仁王を見つめると、人差し指を自分の唇に押し当てた。

「秘密じゃ」
「なら聞くなよ!!!」

握られていた手を離し、咄嗟にしてしまった突っ込みに、仁王はますます楽しくなったのか、ずっと笑っている。
お腹抱えちゃってさ。上戸に入って涙まで流してるんじゃないのか。

「それじゃそれ」

ようやく笑いが収まった仁王は、手で涙を拭った。

「ブンちゃんらしい」

なんだよそれ、と言いながら唇を尖らせると、仁王は相変わらずにやにやと笑っていた。
ブン太が何て返そうかと思案しているうちに、仁王は急に真面目な顔になる。

「最近のブンちゃんは、いつものブン太じゃなか」
「……」
「なあ、気持ち聞かせて」

再び、両手を握られる。

「……こういうの、したい?」

仁王に握られた手から、全身へと熱が伝わっていくのを感じた。心臓の音も速い。……だって、

こんな真剣な仁王、見たことない。

「……そりゃあ、」

ようやく絞り出した声は、自分でもびっくりするくらい掠れていた。


「したいよ」

難しい関係になってしまったと勝手に思いこんでいたのかもな。




「さみぃ〜」

身体をぶるりと震わせると、仁王が背中をさすってきた。

「大丈夫かの、ブン太じいちゃん」
「うるせー!」

正直に気持ちを伝えたら、目の前には理性の飛んだオトコノコがいた。
急に唇を重ね、舌を絡ませてきて……しかも、今まで我慢してきたものの堰が切れたかのようにブン太が止めるまでついばんでくる始末。

「そもそもお前があんなにしなけりゃ……」
「ブンちゃんだって、したいって」
「わー!!!やめろー!!!思い出させんな」

仁王の口を塞ごうと手を伸ばすも届かない。悔しい。
ちなみにここは教室じゃない。外だ。誰かに聞かれたらと思うと耳が真っ赤になる。寒いのもその要因だけど。
ひゅうっと冷たい風が二人の間をするりと抜けていく。冬はぬくもりが恋しい季節だ。

「のう、ブン太、手が寂しい」
「……ポケットが待ってるぜ」
「寂しいのう……」
「ほら」

さりげなく差し出した左手。
仁王が何もアクションを起こしてこないから、どうしたのだろうと見上げた。

「……どうし…っ!」

仁王は顔を真っ赤にして、ブン太の手を見ていた。
そんな顔されたら、こっちまで赤くなるじゃんか。

「仁王」
「あ、いや、積極的じゃなあと」
「いやならいいんだぞ」
「喜んで」

もしかしてだけど、もしかしてだけど。

「仁王、これからどっか行く?」
「急じゃの」
「もう少し一緒にいたいなーって」 

ちらりと顔を窺えば、予想通り真っ赤。仁王はブン太の顔を見て、片手で顔を覆いながら、はあっと溜息を吐いた。

「いやなの?」
「……どうなっても知らんよ」

どうやらお互いがお互いを我慢していたようで。

いつもはあんなに策を練って計画的に事を進める奴なのに。
仁王も恋には不器用なのかなって知ったら、肩の荷が降りた。

「じゃあ行こうぜ?」


寒くて冷たくなった手を、仁王のポケットに突っ込んだ。
この時以降、仁王が積極的になってしまうことを、ブン太はまだ知らない。



(●^o^●)
由夜ちゃんより寒い冬の日のニオブンでした!
タイトルとあまりリンクしてない感じがしますがそこのところは大目に見てやってください;;
不器用な仁王ってどうなんだろうと思って書いてみました!が!いかがだったでしょうか…?
策士は難しい…

リクエストをしていていただき、ありがとうございました(*'v'*)





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