何故、とかどうして、とか。
そんな感情を持つ余地もなく俺は育った。兄弟と血が繋がっていないのは当たり前だったし、「母さん」は年齢も顔もバラバラ。
其所が孤児院―今で言う児童養護施設だということは幼いながらにも知っていて。心のどこかで、自分が捨てられた存在なのだと、悟ってしまっていた。
それでも、院の皆は明るかったんだ。
たとえ自分が捨てられた子であろうとも、今俺達は生きている。その事実を噛み締めて精一杯前を向いて歩いていた。
そんな時だ。
有人と出会ったのは。
綺麗な目をしていた。
何にも負けない強さ。
身体じゃない、心の。
俺達はやがて一つのボールに向かって走り出す。
俺が蒼衣家に引き取られるまで
ずっと、ずっと。
覚えている。
皆と一緒にサッカーをしていた、あの頃を。
サッカーが出来なくなった、
あの虚無感と共に。
(知ってる、でも覚えてない)
(大好きだったサッカー)
(でも今は、)
ボールにすら触れられない
過去をちまちま出して行きます
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