「蒼衣…っ!?」
ぐらりと傾いた肢体を見て、さっと血の気が引いた。器用にベンチの上に横たわった身体を確認して息を吐いたのも束の間、すぐに駆け寄る。
「蒼衣、蒼衣?」
先に異変に気付いていたマネージャー達を押し退けて、蒼衣の顔を覗き込んだ。
聞こえて来たのは、規則正しい寝息。
「寝て、る…?」
「どうしよう風丸くん、先生呼んで来ようか」
「いや…」
見る限りでは蒼衣に異変は見られない。顔色も悪くはないし、ただ本当に、寝ているだけのようだった。
心配なのは倒れた時に頭を打っているかいないかだけなんだが…。
練習の流れが止まりかけているのを見て、ここはひとまず保健室に運んでおこうと立ち上がった。
「俺が運ぶ。お前は皆に指示を出しておけ」
「…鬼道?あ、おい!」
蒼衣を抱えようとした腕は空を切り、代わりに蒼衣を抱き抱えたのは鬼道の腕だった。
突然のことに思考が止まっている間に鬼道はマントを翻して校舎へと向かう。俺は何も言えない。
「…なんだ…?」
いつもとは違う鬼道の雰囲気に首を傾げつつも、不安そうにこちらを見る皆に練習再開の声を上げた。
明かされる過去
(棗、)
主人公座り仕事放棄の回。
次回から鬼道さんとバンバン絡みます、多分!
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