びゅうびゅうと吹き付ける冷たい風に思わず目を瞑って、危ないぞと言われたと思ったら横から物凄い力で引っ張られた。
痛い。
「なにー?」
「電柱にぶつかろうとしいてる奴を見れば誰だってこうすると思うがな」
「うそ、ごめん。ありがとう」
「気を付けろ」
三月だっていうのに雪が降り始めた今日は、珍しく鬼道が一緒に帰っていて。
あんまりにも首元が寒そうだった鬼道にマフラーを渡せば、お前が風邪を引くと突っ返されてしまった。仕方ないから妥協案として手袋を差し出したら受け取ってくれたけど、正直見てる方が寒いので明日からはマフラーを二本持って来ようと思う。
「鬼道ん家ってこっちだったっけ」
「ああ、…いや、曲がらなくて良い」
「へ。どして?」
「送る」
え、と間抜けな音が零れる前に鬼道はうちの方向に歩き出す。
ついでに繋がれた手には俺の手袋がはめられていて、なんとなく優越感を覚えた。
帰る
「なー鬼道」
「なんだ」
「俺ん家そっちじゃない」