一般的に愛玩動物と言われるものは、犬や猫、小動物などが主だ。しかし、人間に獣の耳やしっぽが生えていたらそれは一体何に分類されるのだろうか。それこそ、フェアリーテイルには不思議な奴がたくさん居るし、耳としっぽが生えていたくらいで今さら気に留める事でもないが。
俺は、ソファに寝転がりすやすやと寝息を立てているペットを見てため息をついた。姿形は人間の女そのものなのに、頭の上には茶色くてピンと立った獣耳が生えている。おまけに、しっぽまでもがついているという有様だ。しかし、雨に打たれ弱っていた彼女を最後まで放っておくことが出来なかった俺は、仕方なく家に連れて帰ってきてしまったのだった。その結果、懐かれて今に至る。
「なまえ、寝るならベッド行くか?」
「んー…」
うとうとしながら目を擦る彼女はとても愛らしく、どこかあどけなさを残している。彼女の名前は、勿論飼い主である俺がつけた。自分がつけた名前を呼ぶのはどこか気恥ずかしい感じもしたが、名を呼んでやれば彼女は嬉しそうに擦り寄ってくるのだ。懐いてくれているのは正直に嬉しい。彼女はどちらかといえば猫よりも犬に近いと性格をしていると思う。主人に忠実で賢い。喜ぶ時にしっぽを振る事も考えれば、やはり犬にしか見えない。
「…グレイ、ベッドまで抱っこ」
「はいはい。落ちるなよ」
「うん。グレイすきー」
不意討ちで“すき”は反則だ。首に腕を回して体をぴったりとくっ付けてくる彼女はまだ眠たいのだろう。舌足らずな口調がそれを物語っていた。ゆっくりとベッドの上に彼女をおろすと、シーツに包まって眠る準備を整えている。
「グレイは明日からお仕事だよね?」
「あー…。今回のクエストは確か、一週間くらいかかる予定だったな」
「えっ…!」
彼女の大きな目が見開かれて、明らかにショックを受けたような顔つきに変わった。…頼むからそんな悲しげな目で見ないでほしい。居たたまれなくなる。彼女は俺のペットとはいえ、普通の人間とそこまで大差ない。最初のうちは火を恐がっていたが、今ではそこそこ料理だって出来るし、洗濯も掃除も普通にこなす。だから彼女を置いて行っても何ら支障はでない。はずなのだが。
「…分かった。グレイが居ないのはさみしい、けど…大丈夫」
「……」
心なしか耳が垂れている気がするのは俺だけか。彼女は大丈夫だと言っているが、あれは絶対に大丈夫ではない。きっと途中で寂しさに耐えられなくなって、ぬいぐるみを抱き締めながら一人で泣くパターンだ。
「…きらい」
「は、?」
「ナツもルーシィもエルザもジュビアも。フェアリーテイルのみんなは、いつもグレイと一緒。だからきらい」
「お、おいなまえ」
「グレイは私のご主人様なのに」
むくれた子供のような彼女は、そのまま俺に抱きついて離れなくなってしまった。やはり強がっていても中身は甘えん坊なままだ。…不味いな、かなり可愛い。このまま仕事を放り出して彼女と居るのも悪くはないが、後が面倒だ。
「俺が帰るまで、いい子で待っててくれるか?」
「…うん」
「帰って来たら、ご褒美にシャンプーしてやるから」
「本当?グレイにシャンプーしてもらうの、すき!あとグレイと一緒に寝たい!」
「分かったから俺の顔を舐めるのは止めろ!」


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