暖かそうなコートにふわふわのスカート、お洒落なブーツ。髪の毛は緩く巻いて下ろしてみたり。
そんな格好の似合う女の子が羨ましかった。私は悲しい事に、顔は地味で男の子みたいに髪が短く、声だって低い。その上、自分で思うに口も悪いと思う。身長も、平均的な女の子の値なんて、中学生…いや、小学生の高学年くらいからとっくに越している。
だから、私に告白してきた伊達政宗が不思議でならなかった。彼ほどの男なら、小さくて可愛らしい女の子から美人で大人な女性までよりどりみどりだと言うのに。
何でよりにもよって私?おかげで、最近はさぞかし自分に自身があるだとうと思われる女の子達に高頻度で絡まれるのだ。
はっきりと言ってしまえば、私は美形が苦手だ。自分が地味である事も重なって、どうにも引け目を感じてしまう。綺麗すぎる顔を見ていると、自分が惨めに思えてきて切ない、というのも原因の一つ。
だから、人生初の告白されちゃったよ体験を私は無下にしたのだ。伊達政宗も断られるとは考えていなかったらしく、しばらく呆気にとられた顔をしていた(あれは面白かった)。
が、彼は私の予想を遥かに越えた人物だった。とにかく諦めが悪い彼は最終的には私を脅してきやがったのだ。付き合わなければ、私が授業中に爆睡して涎を垂らしている恥ずかしい写メをばらまいてやる、と。
どうして伊達がそんなものを持っているのだと驚愕に包まれたまま尋ねれば、“honeyの隣の奴から貰った”と一言。私の隣といえば、長曾我部元親。後日、奴には拳骨と蹴りを入れ、駅前のパフェを奢らせた。話が脱線したが、結論を言わせてもらうと、彼は遊び相手が欲しいだけなのだ。何の取り柄もなく、男っぽい私なんてすぐに飽きるだろう。よりによって私が伊達の遊び相手かよ。正直腹が立ったが、あんな恥ずかしい写真をばらまかれたらもう二度と学校に来れない。早く彼が飽きることを願って、私は不本意ながらも渋々頷いたのだった。とにかく私はこんな経緯で、伊達と付き合う事になったのである。


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「政宗、最近全然遊んでくれないよねー。私ずっと待ってるんだけど?」
イライラ。
「政宗君、これから私達とカラオケ行かなーい?」
イライライライラ。
「悪いな、先約があるんだ」
イライラする。いや、私は別に伊達が好きな訳でも、嫉妬してる訳でもない。相変わらず異性に人気の伊達の周りには、毎日女の子の影がある。脅されて付き合っている(ここ重要)とはいえ、私という彼女が居ながらこの有様だ。媚びた甘い声で伊達を誘う女の子にも、いい加減な態度の伊達にも、腹が立つ。
「オイなまえ、顔怖えーって。周りの奴らびびってんぞ」
「っ…元親ぁ!誰のせいでこんな目にあってると思ってんだこのクソ野郎!」
「アイツはこんな女のどこが良いんだ?オレには一生分かんねーな」
「うるせーよ黙れ馬鹿元親。私もう帰るから。あそこの女ったらしに言っておいて」
「お…おい!マジで帰んのかよ!?」
本当は帰りに伊達の家で勉強する予定だったが、(もちろん伊達に無理やり約束をさせられた)女の子に囲まれてる伊達を見ていたらなんだかどうでも良くなってしまった。
やっぱりイケメンには美女が似合うよ、うん。私みたいな男女にはゴリラがお似合いなんじゃないの(自分で言ってて悲しくなってきたよ)。
ホント、なんで伊達と私が付き合ってんだろう。


TITLE/Alstroemeria


続きます