20.コノエネ



幼い頃、両親に不思議な絵本を読んでもらったことがある。不老不死を手に入れた女の子のお話。
女の子は永遠を願い、魔法使いに幸せなまじないをかけてもらった。
そして、女の子は永遠を手に入れた。
永遠の美しさも。
死を恐れる必要もなかった。


絵本の内容はあんまり覚えていなかったけれど幼い私はとても素敵だと思った。





「コノハが羨ましいです」





「え…?」





思っていたことが口に出てしまっていたのかコノハは普段は眠そうな半目も今は驚きによってか目を大きく見開いていた。





「コノハは不老不死ってどう思いますか?」





彼がどんな返答をするか興味があった。





「…とても寂しいと思う」





意外だ。
彼がこんな返答をするなんて。





「そうですね…。その通りです」




そうだ…思い出した。
絵本の女の子は友達を、親を、愛する人、子供、孫が死ぬなか、独りだった。
誰も独りぼっちの女の子の気持ちなんて理解出来なかった。
女の子は死にたいと、死なせてくれと願った。
しかし、それすらも許されない。
女の子にかけられた幸せなまじないは呪いそのものだった。





「私の呪いはいつ消えるんでしょうね」





「王子様のキスとか…かな」





コノハが首をこてん、と少し傾けながら答えた。
ロマンチックな返答だ。
とても男の子と思えない。





「ふふ」





彼らしい答えについ笑ってしまう。





「…なんで笑うの?」





「いえ、何でもないですよ。」





私はキスさえも出来ないけれどきっと私の王子様はあなたしかいない。




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