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無意識じゃいられない
「〜♪」
鼻歌を歌いながらメイドたちの休憩室?みたいなところの扉を開けた瞬間に騒がしい笑い声が聞こえた。
女子+セトがお菓子を囲んで談笑していた。
「あ、お帰りなさい!!」
貴音さんが目元に涙を浮かべながら必死に笑いをこらえている様子だった。
「で、聞いてくださいよ!!お兄ちゃんったら!!」
これはいわゆる女子会というものだろうか。
自分のイメージでは恋バナというものをするのかと思いきや、キサラギちゃんのお兄さんの話をしているらしい。
マリーもクスクスと笑いながら、セトとお菓子をモグモグと小動物のように食べている。
「キサラギちゃんのお兄さんって?」
少し気になって訊いてみる。
「高校3年生でつい先日まで一緒に働いてたんですけど1日で辞めちゃったんです」
「え、なんで?」
「お嬢様に睨まれて、そのままビビりまくって辞めちゃったんだよね。」
貴音さんが笑うが僕には笑うことが出来なかった。
「……………」
そんなにもキドの睨みは怖いのだろうか。
「まあ、キドさんは男の人が苦手ですし…お兄ちゃんは情けないぐらいビビりだし」
「いっそ、シンタローも女装すれば良かったのに」
「お兄ちゃん、細いし白いから女装似合うかも…!!」
何だか凄い言われようだな。
自分も執事として働いていたらキドに睨まれて辞めてたかもしれない。
それは何だか嫌だけれど…でも、女と思われたまま、このバイトが終わってしまうのも嫌だ。
「カノ、どうだったっすか?」
セトに話しかけられてセトに訊きたいことがあったのを思い出した。
「ねえ、セト訊きたいことがあるんだけどキドって木戸つぼみ…だよね?」
「カノ覚えてたんすね!!良かった、キドもきっと喜ぶっすね!!」
「やっぱり」
木戸つぼみは僕の幼なじみだった。
小さかった時、僕はよくセトとキドで三人で遊んでいた。
夕暮れの公園にキドと僕…二人だけの時。
「しゅうや君、お父様がね家で勉強してなさいって言うからもう遊べない。だから、バイバイ」
キドは一方的に別れを告げ次の日からセトと三人で遊んでいた公園に姿を現すことはなかった。
幼い僕はショックでいつの間にか記憶の奥底に封じ込めていた。
それほど自分にとって木戸つぼみの存在は大きなものだったのだろう。
それを今になって思い出すなんて…自分に呆れる。
あんなに大切だったのに。