これが、恋?




「じゃあ、とりあえず試しにマリーちゃんが淹れたハーブティーをお嬢様の部屋に持って行ってくれる?」





貴音さんに言われてただ今、僕はお嬢様の部屋にウキウキとしながら向かった。





ドアをノックして返事をもらったあと、ゆっくりと部屋に入った。




「紅茶をお持ちしました」





「ああ、すまないな」





お嬢様は難しそうな本を閉じた。




よく見ると経済についての本らしい。
僕にはとても理解出来そうにない本だった。





「お嬢様、どうぞ」





意識しすぎてティーカップを落としそうだったから、なるべく顔を見ないようにそっと渡す。





「あのな、その…」





お嬢様がちょっと困ったように視線を泳がす。





「?」





「お嬢様って呼ばれるのはあんまり好きじゃない、だから…キドって呼んでくれ。あと、敬語も止めてくれ」





「じゃあ…キド」





「ん、それでいい。カノ」





「(うわあぁ、名前呼んでもらっちゃった!!)」





たったそれだけのことなのに嬉しくて恋する乙女みたいに顔が真っ赤になってしまうのを欺いて必死に隠した。





――これが、恋?――










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