これが、恋?





え、ウソウソ…!!





まさか目が合っただけで恋とかあり得ないでしょ!!





そんなんで恋に落ちたら僕、なんで今まで好きな人出来なかったんだよ。





「おい、お前…大丈夫か?」





慌てたように駆けつけてくる彼女の顔を間近に見てギョッとした。




彼女の顔に見覚えがある。
いつも泣いていたあの女の子を思い出した。





「いえ、大丈夫です。お嬢様の姿があまりに可愛らしすぎて見惚れてしまっただけですから。」





「な、なに言ってんだよ…。えっと、お前…名前は」





名前!!
完璧に忘れてた。





もちろん本名ではバレてしまうに違いない。





「僕の名前はカノと申します。」




「僕…?」





あ、やってしまった。





普通女の子は僕って言わない。





女の子になりきるって難しい、先が思いやられる…どれぐらい難しいかというとママと呼んでいたのをいきなりお母さんと呼ぶぐらいに難しい。





「あ、あの!!僕って変ですよね!!あはは…」





「いや、俺も自分のこと俺って言うし。俺はキド、よろしく」





そう言ってお嬢様はふっと優しく笑う。





キド…木戸つぼみ?





「…!!!あ、よろしく…お願いします」





笑顔に一瞬見惚れてしまった。
ちょ、いきなり笑顔とか反則すぎるでしょ!!




















「はあ…」





「どうだった?」





あのあと迎えに来た貴音さんが僕にそう訊いてきた。





「色々、心臓に悪かった〜!!」





「あはは」





貴音さんは嬉しそうに笑う。





「?」





「いや、ね。泣いてなくて良かった」




















先ほどの部屋に行くとセトだけではなくメイドの女の子が二人新しく居た。





「あ、お帰りっす!!」





「せ、セト…こ、この人が新しい人…?」





白くてフワフワの長い髪の女の子がセトの後ろに隠れている。





「え、ホントにこの人…男なんですか!?」





もう一人は短い髪にやや茶色がかった女の子…どこかで見たことがある気がする。





「如月モモ…?」





最近巷で人気のアイドルによく似ている。





雑誌でもよくインタビューとかに出てるし。





「え!!なんで分かったんですか!?」





「普通分かるからね、モモちゃん」





貴音さんが呆れたように言う。





「えっと、とりあえず自己紹介をしよっか」





貴音さんの言葉にそれぞれ自己紹介を始める。





「私、小桜茉莉っていいます…。ま、マリーって呼んでください…。あ、えっと、終わりです…。」




そうボソボソと呟くとすぐにセトの後ろに隠れた。





「ママリーちゃんっていうの〜?」





もちろん、マリーって分かったけど何だか無性にからかいたくなった。





「カーノッ!!マリーは今までで一番自己紹介がうまくいったんすよ!!苛めないでほしいっす」





「はいはーいってあれでうまくいったとか……プッ!!!!」





これ以上からかうとセトに殴られかねないので止めておくことにした。





「如月モモ、16歳です!!」





「うわあ、年齢も一緒に言うあたりアイドルっぽいね〜!!」





からかって言ってみれば途端に羞恥でキサラギちゃんの顔が真っ赤になる。





「はいはい、からかわないでね。じゃあ、とりあえず付いてきて。」





セトに訊きたいことがあったが仕方ない。





大人しく貴音さんに付いていき、たどり着いた場所は大きな厨房だった。





「あ、貴音だぁ〜!!おーい!!」





背が高めの青年が手を大きく振っている。





「遥、あんたは厨房に入るなって言ったでしょ!!」





「え〜、疲れてお腹が減っちゃったんだもん。だからね、出来上がってた食事食べちゃった」





「ぎゃあぁぁぁ!!!あ、あんた何してんのよ!!!」





「え、だって料理人さんに渡されたんだもん」





「そ、それ!!運べっていう意味だから!!」





最初は大人な印象だった貴音さんは遥と呼ばれた人には年相応な女の子みたいだった。





僕の視線に気づいたのか貴音さんがあたふたし始めた。





「あ、コイツは…」





「九ノ瀬遥だよ〜!!」





貴音さんの言葉を遮って遥さんが自己紹介をした。





自分も同じように自己紹介をした。





「僕も執事じゃダメなの?」





だって遥さんは男で執事の服を着てる、女装なんてしていない。





「うーん、遥は特別っていうか…なんか男って感じがしないじゃん」





「あー、わかる気がする」





貴音さんの言葉に同意する。





「ひどいー!僕、これでも貴音の彼氏なのに!!」





「へぇ…」





ニヤニヤと笑いながら貴音さんを見ると顔を真っ赤にしながら遥さんをべちべちと叩いていた。





「い、痛いよ…。貴音、落ち着いて!!」





「うるさいうるさーい!!」





そんな二人を見てるといきなり後ろから服が引っ張られた。





後ろを見てみればマリーの姿があった。





「あ、えっと…あの二人仲良しさんだから…なかなかお話が終わらないの、だから…」





「マリーが教えてくれるってこと?」





マリーはコクリと頷いて、こっち来てと手招きをした。





大人しく付いていくと厨房で料理を一生懸命作っているキサラギちゃんの姿があった。





「モモちゃん、キドや貴音に怒られちゃうよ…!!」





「大丈夫!!今回はすごく力作だから絶対にキドさんだって喜ぶはず!!」





そう言ってキサラギちゃんが差し出した物はとても料理と呼べそうにない代物だった。





「ぎゃあぁぁぁ!!モモちゃん、何してるの!?」





貴音さんが遥さんの首根っこを掴んで来て、ようやく落ち着けるかと思いきやキサラギちゃんの作った物体Xを見て叫んだ。





「あ、貴音さん!!いいところに!!これなら、いきなりキドさんは怒鳴って倒れませんよね…!!」





「ダメ!!それ自分で処分して!!」




「はーい」





美味しい言いながら可愛らしい笑顔で物体Xを食べるキサラギちゃん。





とても真似出来ない、したくもないけれど。





「はあ、マリーちゃん…ハーブティー淹れて」





「あ、はい…!!」





マリーがあたふたと準備をしていく。





「えっと仕事の話だけど…カノ君には基本的に食事とか飲み物とか運んでもらうのと掃除、お嬢様のお話相手、力仕事がたまにあるぐらいかな」





「りょーかい!!」





お嬢様の話し相手という仕事に魅力を感じる。





「たぶん、食事とか飲み物を運ぶことが多くなるかな」





「え、なんで?」





「マリーちゃん、ドジだから転ぶし…モモちゃんは変な調味料とか勝手に入れるし、遥は食べちゃうから」





「………………」





なんというか今まで貴音さんは大変だったんだな…としみじみ思った。












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