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愛してしまったから
メイド服ではなく執事服に身を包んだ僕を見てキドは驚きを隠せてないようでそんなキドの様子がおかしくて僕はクスリと笑った。
「どういうことだ…?」
キドが低い声を出して訊いてきた。
なるべく威圧感を出そうとしているっぽいけど僕にはむしろ可愛くみえてしまった。
「もう、バレちゃったし…いいかなってさ。ね、僕の話訊いてくれる?」
誤解されたままじゃ嫌だ。
だからキドの綺麗な手を力強く握ったらキドは何故か泣きそうな顔をしていた。
違うよ、僕は君にそんな顔をさせたくない。
「最初はほんの軽い気持ちだったんだよ。夏休みに遊ぶためのお金が欲しいからバイトしたいなぁって思ってたらセトにバイト誘われて無理やり女装させられてそれで…キドと会って、それで…」
今までのことを思い出してキドに話していたら何故か涙が出そうになって慌てて目を擦った。
言葉もつっかえて上手く伝えられないけど今、伝えないともうキドに伝えられなくなる気がする。
幼かったあの時のように。
「ちゃんと聞いてるから…ゆっくりでいい」
さっきまで怒ってたくせにキドは優しく僕にそう言った。
「……キドを見て恋に落ちたよ。こんなに綺麗な人がいるんだって。それからキドといっぱい話すようになって女の子らしい意外な一面とかも見てどんどん君に引き寄せられたんだよ」
「なんだよ意外って」
キドが拗ねたように唇を尖らせた。
そういうことしなさそうに見えて凄く可愛い仕草とかするからだよ。
「つぼみが好き。いつも泣いていた泣き虫な君に出会った時からずっと好きだった」
ショックで記憶の奥底にしまいこんでしまったこともあったけれど、きっと僕はキドをずっと好きで居続けたんだ。
だから、なかなか好きな子が出来なかったんだね。
「……………」
キドは目を見開いて僕を見つめている。
だってキドはきっと小さい頃なんて覚えてないよね。
「好き、だよ…」
最後には僕の目から涙が溢れた。
すごくカッコ悪い告白だけどこれが今の僕に出来る告白だから。
フラれるかもしれない。
明日から来なくていい、っていわれるかもしれない。
「…っ!!」
予想していたのとは逆に何を思ったかキドはいきなり僕に抱きついてきた。
「き、キド!?」
ふわり、とリンスの上品な香りが掠めて心臓の鼓動がドクンドクン、と強くなっていく。
「覚えててくれたっ…!!」
僕の服にしがみつきながらキドは泣いた。
「つぼみ、ゴメンね。ありがとう」