こんなの恋じゃないのに





部屋に戻り、ベッドにダイブして先ほどのことばかり考えていた。




「…違う」





俺はあんなことが言いたかったんじゃない。





カノにもきっと事情があって…って、どんな事情かは知らないが何も聞かないで怒鳴りつけてしまったのは悪いと思う。





でもやっぱり、許せなかった。





嘘をつかれるのが一番嫌いだから。





「俺は何がしたかったんだろうな…」





自嘲気味に呟く。





お父様の後を引き継ぐ?





違う、俺は修哉が好きでずっと一緒にいたかっただけなのに…いつしか自分から修哉を遠ざけていた。





ただ自分はお父様の言いなりになるのが嫌だっただけじゃないのか?





だから修哉が好きだからっていう理由を利用して自分の運命から逃げようとして…





考えてみれば幼い子供が恋だなんて自覚するはずがない。





だから修哉は好きじゃない。





友達からただの他人になっただけ。





ただの他人になってしまったのは自分のせい。





「…カノ」





明日アイツはカノとして来るのか…それとも修哉として来るのかどうか。





もしかしたら来ないかもしれない。





その方がいい。





カノなんて知らない。





修哉なんて知らない。





好きじゃない。





好きじゃないのに、どうしてこんなに胸が痛いのだろうか。




















翌日





俺は来ないだろうと思っていたカノが姿を現してきた。





正確には鹿野修哉がそこにいた。




女装はしておらず服装もメイド服から執事服になっている。





驚愕している俺を見てクスリと笑うカノ。





「どういうことだ…?」





なるべく声を低めにして訊く、まるで尋問のように。





「もう、バレちゃったし…いいかなってさ。ね、僕の話訊いてくれる?」





断ることなんて出来ないぐらいカノは真剣そうな表情とカノに手を握られ、なぜか胸と喉が苦しくなった。





――こんなの恋じゃないのに――










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