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こんなの恋じゃないのに
恐る恐る後ろを振り返れば顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべているキドの姿を見て一瞬で頭の中が真っ白になる。
キドはこの部屋には用もないので来ることなんてなかったのにどうしてか…と考えているとキドの足元に落とされた携帯を見て自分の間抜けさを思い知らされた。
「き、キド…あ、あの…これは」
何と言い訳すればいいのか分からず口をもごもごさせる。
「俺を…し……のか」
キドが小さく何か呟くが僕の耳には届かない。
「え?」
「俺を騙してたのか!!」
キドが涙をぼろぼろと溢しながら僕を真っ直ぐ見つめている。
騙したのバレたら怒られるだろうなとは思っていた…けれど、まさか泣かれるとは思っていなかった。
「お前は俺の話を聞いて…バカなやつだって本心では嘲笑ってたんだろ!?」
きっと僕がキドの好きな人の話ばかり訊いたからだ、だからキドは誤解をしているのかもしれない。
「そうじゃないよ、僕は…」
「言い訳なんか聞きたくない」
ピシャリと僕の言葉を遮ると、キドは走って去って行ってしまった。
バレてしまったら仕方がない。
僕はある覚悟を決め、貴音さんの元へ行くことにした。
僕と床に落とされた携帯だけ残された部屋は怖いぐらいに静かだった。