当たり前のように二人は
※学パロです、キドさんよりカノさんの方が身長高いです。
セトとは幼馴染みじゃありません。
シンアヤ、セトマリ、遥貴、ヒビヒヨ要素が少しだけあります。
5月になり春から夏へと移り変わろうと気温が温かくなってもやはり暗くなってくると夜の風は冷たい。そんな帰り道のなか、キドはいきなりデートのお誘いをしてきた。キドから誘ってくるなんて…明日、槍でも降ってきそうだ。嬉しさのあまり、キドより背が高くなった時ぐらいにだらしなく緩む頬と口元を隠すようにニッコリと笑って…いいよ、と言えばキドはホッとしたように小さく微笑んだ。
「…じゃあ、あとでメールする」
「えー、別にメールしなくても窓から…ぐふっ!!」
窓からキドの部屋に入ろうか?と言おうすれば頬を真っ赤に染めているキドに殴られた。
――冗談のつもりだったんだけどな
…いや、やっぱり普通にキドの部屋に忍び込んでたかもしれない。隣同士の家で幼馴染みということもあって僕は窓からキドの部屋に遊びに行くことがよくあった。それはお互いが思春期の時期…つまり中学生になってからも僕は度々キドの部屋に訪れていたのだが…たまたまキドが着替えているときに忍び込んだときからキドは僕がキドの部屋に入ることを嫌がり始めたから僕もあんまりキドの部屋に行かなくなった。
――別に恥ずかしがらなくてもいいのに…
小さい頃は一緒にお風呂にも入った仲だというのに女の子は難しい…、と言えばキドにまた殴られそうなので口を閉じた。
「…じゃあな」
「うん」
キドに手を振り、自分も家に入ることにした。明日が楽しみだな、と僕は小さく笑った。
「…ふー」
玄関で靴からスリッパへ履き変えて階段で2階に上がり、自分の部屋のドアを開ければそこには当然カノの姿はない。当たり前だ、ちゃんと窓を閉めているし、あれほど釘をさしといたし…でも、やっぱり少し寂しく思ってしまったり…全く、つくづく乙女心というものは厄介だ。
「…やっぱり、女と思われてないんだろうな」
カレンダーの10に小さく書かれた字を見つつ、カバンから携帯を取りだし、カノにメールを送った。
…翌日、待ち合わせ場所に駆け足で行くとそこには既に無表情に携帯をいじっているカノの姿があった。いつもの学校の制服じゃなくて私服…それだけでなんか新鮮でカッコいいなとか思ってしまったり、本人にそのことを言えば調子に乗るだろうから言わないけれど。
「あ、キド!!」
カノがこちらに気付いたのかぱあぁ、と笑顔になって手を大きく振っている。
「…すまない、待たせたな」
「ううん、全然!!なんか今日、雰囲気違うね〜」
カノは爪先から頭までじっくりと見ながら笑い、じゃあ行こっか、と俺の少し前を歩いた。
――それだけ?
カノのことだからもっとなんか言ってくれると思っていた。頑張っていつもと全然違う格好をしたのに…。ネガティブな思考を振り払ってカノの隣まで走った。
「ねえ!ねえ!プリクラ撮ろうよ!!」
カノが右手で俺の腕をグイグイと引っ張り、左手の人差し指をプリクラ機を指す。こういうのは普通、女子が撮りたがるものであると思っていたがどうやらそうじゃないのかもしれない。
「…仕方ないな」
今日だけはコイツのワガママに付き合ってやろう。
「お!キド、珍しいね!!いっつもこういうの嫌がるじゃん」
「今日だけはお前のワガママに付き合ってやるよ」
「やったー!!じゃあ、ちゅープリ撮ろうよ!!」
「ブッ飛ばすぞ」
「…ごめんなさい」
幼馴染みだからこういう軽い冗談を言い合えるんだろうな。『幼馴染み』だから近くにいられる、そう考えると胸が苦しくなった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき、外は既に真っ暗になっていた。フードコートに行ってとりあえず席に着いて晩ご飯を食べていた。
「ふー、疲れたぁ…」
「あんなに歩いたんだから当たり前だろ」
プリクラを撮り終わった後、デパートの中を回ったり、駅に行ったり、本屋に行ったり、服屋に行ったり…正直もう足が痛い。
「でも、楽しかったよね!!」
今までの疲れが吹き飛ぶぐらいにカノが嬉しそうに笑った。
「そうだな」
俺も同じ様に笑ってカノと話していると後ろが何だか騒がしく訝しげに後ろを振り返ると見たことあるような顔のやつが何人かこちらを見ていた。
「カノじゃないっすか!!」
その中で一般的にイケメンに分類されるであろう長身の男が席から立ち上がり、カノの近くまで来ると何やらニヤニヤしながらカノの背中をバシバシと叩いた。
「セトこそ、マリーとはどうなの?」
「いやー、それが…」
カノとセトと呼ばれた男が少し話してから向こうの席からセトよりも長身で少しぼんやりしている男がこちらに来た。
「…これ、」
差し出されたのはグレープ味の飴だった、意味がわからず首を傾げた。
「…そう、飴…あげる…」
「ああ、ありがとう」
「コノハさん、帰るっすよ!!」
セトとコノハと呼ばれた男が向こうの席に戻るとカノと二人して溜め息をついて少し笑い合った。
「僕、トイレ行ってくるね。何か話しかけられたりしたらすぐに連絡して、すぐ戻ってくるから!!」
俺が返事をしたら、カノは携帯をポケットに入れて走っていった。カノがいなくなってからはあ、と溜め息をついた。
「…顔が熱い」
あんなこと言われたらちゃんと女の子扱いされてるみたいで何だか照れくさい。カバンから手鏡を取り出す。顔、緩んでなかったかな…。
「シンタローさん、そんなに気になるなら話しかけてくればいいじゃないっすか!!」
「ちげーよ!!お前らみたいに俺はナンパしねーから!!」
「うわー、楯山先輩という人がいるのに如月先輩はナンパしたいとか…コノハも榎本先輩がいるんだからね」
「うん、そういうヒビヤもヒヨリがいるからダメだよ」
「はあ、何言ってんの。僕はシンタローとは違うし」
「おい、お前…今、シンタローって呼び捨てしなかったか」
「シンタロー、今ならカノはいないっす!!チャンスっすよ!!」
「おい、お前もかよ!?」
リップクリームを唇に塗ったり、携帯をいじって時間をしていると後ろからセトたちのそんな会話が聞こえてきてだんだんと眉に皺が寄る。
「(…はあ、早くカノ帰ってこないかな)」
そんなことを考えてるとちょうどカノが息を少し切らして帰ってきた。
「キド、大丈夫っ!?何もされてない!?」
「あ、ああ。別に何もなかったが…」
カノの様子に少し驚きつつ、そう返事すればカノは安心したようによかったぁ、と呟いた。
「(…そんな反応されると、期待しちゃう)」
熱くなった頬を冷ますように手で風を送る。
「もうそろそろ、帰ろっか」
「ああ」
「うわー、冷えるねー」
「ちょ、お前…」
いつの間にか繋がれていた手にやっぱりどうしても期待してしまう…なんて単純な生き物なんだ、俺は。
「…温かいでしょ?」
視線は合わさずにああ、と頷いた俺を見てカノがくすりと笑った。二人で夜の道を歩くのは初めてではないはずなのに何故か新鮮に感じられた。
「…あの、な」
やがて家の近くで足を止めるとカノが不思議そうにこちらを見た。
「どうしたの、キド?」
「…あ、えっと、その…」
誕生日おめでとう、って言うだけなのに何でこんなに言葉がつっかえるのだろうか。
――大丈夫、言うだけ。
別に告白とかじゃないんだからそんなに緊張なんてしなくていい。
「…誕生日、おめでとう」
繋いでいるカノの手にぎゅっ、と力をこめた。
「ありがとう」
カノは俺の頭をぽんぽんと撫でたと思いきや、突然右手で頭を引き寄せてくると俺がカノに抱きつく形になり慌てて離れようとしたが腰を左手で引き寄せられ、完全に抱き締め合っている形になった。
「ね、プレゼントはつぼみがいいな」
修哉の背中に手を回して小さくバカ、と呟いた。
――当たり前のように二人は――
あとがき…
当たり前のように二人は付き合います(真顔
めちゃ長ww
カ
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