誕生日 | ナノ
ずっと一緒にいようね













「誕生日おめでとう!!」





バイト先の先輩や同僚に手渡されたのはいわゆる誕生日プレゼントというもの。





「……ありがとうございます!!」




礼を済まし、その場を後にし溜め息をついた。





誕生日なのにバイトがあることやこれでプレゼント何個めだろうか…とついつい眉間に皺が寄るのと溜め息をついてしまう。





もちろん自分の誕生日を祝ってくれるのは嬉しいが何故か素直に喜べなかった。





……自分は物より気持ちが欲しい…そう、思った。





先輩や同僚からプレゼントを貰ったときに少しだけ見えてしまった。





自分に対しての下心の塊。
それは好意だったり、結局は自分のことしか考えてなかったり…





「(…やっぱり人間は怖い)」





能力の有無に関わらず、やはり人間は怖いものだと思った。





自分は能力をコントロール出来るようになってから必要以上に使っていないがふとした時に人の心が見えてしまったりする。





そして自己中心的な人間に対して幻滅して…それこそ自己中心的なのかもしるないと自嘲する。





結局は醜い人間が嫌いなんじゃなくてそんなものを見て嫌なことを考えてしまう自分が嫌いなのかもしれない。























「…ただいまっす」





いつもより遥かに長く感じたバイトを終え、アジトに戻ればキドに「パーティーの主役はまだ入ってくんな」と言われ、マリーに会うことなく部屋に押し込まれてしまった。





「…なんか落ち着かない」





アジトにいるときはいつも隣にはマリーの姿があった。





バイトから帰ってきたら真っ先に自分を迎えてくれるのはマリーだった。





思えば彼女の存在は自分にとって強いものだったんだなと改めて実感しつつ、頭の中でどうにかキドに見つからずすぐにマリーに会えないだろうかと考えるがその考えをすぐに打ち消した。





きっと彼女もパーティーの準備で忙しいだろうし、わがままを言ってはいけない。





しかしマリーのことを考えると心配で心配で…皿を割っていないだろうか、指を切ったりしてないだろうか、カノに苛められてないか…心配事は尽きることがない。





キドやカノに過保護すぎだと言われたとき軽く否定しといたが実は過保護なのかもしれない。





「…マリー」





口に出したのは愛しい彼女の名。




自分の誕生日なのだからもっと彼女のそばにいたいし、もっともっと彼女に触れたい。





このままじゃマリー不足で死ぬかもしれないと馬鹿なことを考えていると部屋のドアが勢いよく開け放たれた。





開け放たれた先にいたのはパーカーの上からエプロンを身に付けているキドと涙目になっているマリーだった。





「…セト、マリーを任せた」





キドは短く用件を済ませるとすぐに去ってしまい、部屋には自分とマリーだけになった。





「…えっと、マリー…どうしたんすか…?」





「…私、セトのためにパーティーの準備してたんだけど…やっぱり、いっぱい転んじゃって、…キドに準備が終わるまでセトと一緒に待ってろ…って言われたの。」





マリーはキドに邪魔者扱いされたと勘違いしているがキドは…メカクシ団団長ならそんな酷いことはしない、きっと自分とマリーのことを考えてくれたのだろう。





そのことをマリーに伝えれば安心したように「…そっか」と少し笑った。






「…あの、ね…セトへのプレゼント…思いつかなくて、まだ準備出来てないんだけど…一緒に、来てほしいところがあるの」





「…マリー、プレゼントなんてなくていいっす。俺はマリーと一緒にいれるだけでいいから…」





マリーの柔らかい体を抱き締め、耳元で囁けばマリーは「…うん」と小さく呟いた。

























キドにメールでちょっと外へ出てくると送り、マリーと手を繋いで外へ出れば春の暖かい風が迎えたのを感じ、もう春になったのだとしみじみ感じた。





バイトから一人で帰ってきたときはそんなこと、これっぽっちも思わなかったくせに彼女が隣にいるだけでまるで世界が違うみたいだ。





マリーと一緒に来たのは桜で出来たトンネルみたいな場所だった、上を見ても右も左も見ても桜が咲いていてまるで桜の世界に来たみたいだ。





「…セトに見せてあげたかったの」





マリーが少し寂しそうに笑いながら散っている桜の花びらを掴もうとしている。





散っていく桜がどこか寂しく、儚いように桜の花びらを静かに掴もうとしているマリーの姿も今にも消えてしまいそうなぐらい儚い。




「…お母さんのこと、思い出してるんすか?」





訊いてはいけなかったかもしれないキーワードだったかもしれないが彼女は「…ちょっと、ね」と笑った。





「…セト、誕生日おめでとう」





マリーはいきなり抱きつきながら祝いの言葉をやっと言ってくれた。





それが嬉しくて抱きついてきたマリーの背中に腕を回すとその体は少し震えていた。





「マリー…?」





マリーが顔をあげるとその瞳は涙に濡れていた。





そのときにふと見えてしまった、彼女の心を。





「(…また、盗んでしまった)」





「…あの、ね…セトの誕生日ね嬉しい、はず…なのに…私、セトが年をこうやってとっていくのが怖くて誕生日がこなければいいのにって…考えてた。ごめん、なさい…」





謝罪する彼女をもっとぎゅっと強く抱き締めた。





「…うん、そうだね。でも、いつかは…」





自分も寿命を迎えるんだよとは言えず、ただただ黙るだけだった。




「…ごめん、ね…ホントは笑顔で言う、つもり…だったのに」





「…マリー、無理しなくていいから」





これ以上、泣いている彼女を見たくなかった。





…だから、約束をした。














『ずっと一緒にいようね』















あとがき…


セト、誕生日おめでとう!!


うん、やっぱシリアス風味…


意味わからん文でさーせん