貴音と遥は同じ世界で確かに一緒に生きてきたはずなのにいつから私たちは違う世界で生きることになったんだろう。





外の世界で楽しんでいるコノハを見て、私と生きる世界が違うんだと突きつけられた。





私もそっちの世界に行きたいよ。




行けたらどんなに楽しくて幸せなのだろう。





「…コノハはいつも楽しそうですね」





「うん、みんな優しいし…満足」




「そう、ですね…」





「エネは?」





「え…?私、ですか…」





「楽しくないの?」





「た、楽しいに決まってるじゃないですか!!」





嘘は言っていない。





でも物足りないの、遥がいないの。




「コノハは記憶を取り戻したくないんですか?」





「僕は取り戻したくない」





あれ?
なんで?
私と遥の思い出なんだよ?





「思い出せないのは何か嫌なことがあったのかもしれないし、思い出したら自分が自分じゃなくなってしまうかもしれない…だから、いらない」





「た、確かにそうですよね!!こんなに素晴らしい仲間がいるんですから…思い出なんてこれから作ればいいんですもんね!!」





これから、って何だろう。





私と遥の思い出は何だったんだろう。





意味のない、ものだったのかなぁ…?





「…私、ちょっと席を外しますね」





コノハにそう告げると私は電子の海へと溶け込む。





「わ、たし…バカだ…」





コノハにとって貴音との思い出はいらないものなんだ。


彼は遥よりもコノハとして生きることにしたんだ。





コノハと再会して、
私と彼の生きる世界が物理的に交わらないとは分かっていたけれど、もう私たちは心までも交わらないんだね。









交わらない二人の世界


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