君に伝われ!


「なぁ…カノ」

身を離し、キドは彼を呼ぶ。

顔を上げたカノは泣きそうな表情をしており、改めてキドは反省した。

キドは彼に優しい表情で問う。

「どうしたら信じてくれる?」

「…キドが僕の事、好きって証拠が欲しい…」

証拠…か…

「じゃあ…」

キドは少し間を開け、口を開いた。

「一つだけ俺が、お前の言うこと聞いてやる」

『何でも言っていいよ』
笑い掛けると、カノは目を見開き見る見る顔を赤く染めた。

その姿にキドは優しく、くすりと笑う。

きっと彼は今、自分との良からぬ妄想で頭が埋まっているのだろうと一人悟った。

カノとは付き合ってまだ3ヶ月。

手を繋いだり、口づけくらいはしたことはある。

だけどその先は…

もしも今、彼がそれを望むのなら。

キドは彼の為に覚悟を決めた。

「じゃあ…」

カノが口を開く。


「キドから僕に、キスして」


キドは目を開き、カノを見た。

それだけ?

それでいいのか?

唖然として反応に遅れる。

やがて自分が考えた事を思い出し、キドは顔がかぁと熱くなるのを感じた。

「ご、ごめん!やっぱ今の無し!!」

慌てたカノがキドから少し離れ、両手を前に突き出しぶんぶんと左右に振るう。

「僕何言ってんだろね」

ハハッと笑い、立ち上がろうとしたカノの胸倉をキドは掴んだ。

『えっ?』と言う間もなく引き寄せられた身体。

唇に柔らかい感触を感じる。

深くはないけど、それをしていると認識するには充分な長さのキス。

しばらくそうした後、やっとキドが唇を放した時には、カノは呆然とし固まっていた。

ハッと我に返ったカノの頬が緩む。

「大好きです!!」

叫ぶように言ったカノはガバリと、キドに覆いかぶさるように抱き着いた。

「ね、もう一回!」

無邪気な彼の表情に、キドは笑う。


「今日だけな…」




それは甘い午後のお話。

〜END〜


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