「ついたーっ!!」
長い時間バスに乗って、ついにあのテーマパークに着いた。ざわざわとしながらバスを降りるクラスメイトは、皆笑顔。まだ入場もしてないのに、テンションが上がりまくっている。
「幸助!つぼみ!一緒に回ろうよ!」
「いいっすよ!」
「茉莉も一緒にいいか?」
「勿論!」
僕達四人は、幼馴染みだ。且つ僕とつぼみ、幸助と茉莉は付き合っている。
そう…今から自由行動と言う名のダブルデートだ。
いよいよ入場。さっきからすごくソワソワしてしまう。パークのお姉さんに送り出されて、僕達は中に入った。
「うわー!すごいね!」
「こんなところ、久しぶりっすからね!」
「ねぇねぇみんな、あれつけようよ!」
茉莉が指差したのは、カチューシャ。沢山種類があって可愛い。
「ほらほらつぼみ、可愛いよ」
「べ、別に俺はいいっ…修哉、欲しければ買ってもいいんだぞ。」
「強がらないでよー!ほら、お揃いで買おう?」
「…わかったよ…」
渋々、といった感じに見えたが、僕にはわかる。この可愛い子は内心ものすごく喜んでいる。その証拠にほら、綺麗な目がキラキラと輝いている。
買いに行ったつぼみを見送り、ふとあの二人に目を向ける。
「うわあ、これ可愛い!ね!幸助?」
「ほんとっす!でも、茉莉も可愛いっすよ、リボンがよく似合う。」
「幸助…」
あの二人は完全に二人だけの世界に入ってしまっている。やれやれ、と視線をもどすと、つぼみが戻ってきた。
「おかえりー!早速だけどさ、つけてみてよ」
「う…絶対似合わないからな…お前もつけろよ!」
「わかったわかったー!」
「……つけたぞ」
かっ…可愛い…
ここのテーマパークのキャラクターの猫耳がついたカチューシャをつけた彼女は、本当によく似合っていた。同じものをつけている女子も数名いたが、つぼみが一番だ。
「似合ってる、つぼみ」
「…っ…あ、ありが、とう…」
「あー、本当に可愛い!ね、二人で写真撮ろうよ!」
「ん。」
それから、四人でパークないをいろいろまわった。気がつけばもう夜で、そろそろパレードが始まる時間だった。「幸助、ここからは別行動で!」
「オッケーっす!さ、行こう茉莉!」
二人と別れ、僕とつぼみ、二人きりになる。いつもは照れまくってあまり喋らないつぼみも、さっきから『まだ始まらないのか?』『楽しみだな!』『花火もあるみたいだし!』と、キラキラと目を輝かせていた。
-let's start!-
元気なキャラクターの声が聴こえ、パレードが始まった。真っ黒な夜が、LEDの色鮮やかな光に包まれて行く。
「綺麗…」
ぽつり、と隣で呟く声が聞こえた。その声の主も、真っ白な肌が光に照らされ、なんとも言えがたい神秘的な美しさが現れている。だからだろうか。僕はついぽろりと声に出してしまった。
「つぼみも綺麗…可愛い、大好きだよ」
「は……」
やばい、この展開は殴られる…
そう思った僕はぎゅっと目を瞑った。
「…私も、大好きだぞ、修哉…」
「え…」
右手に感じる暖かさに目を開けると、真っ赤な顔で俯きながら僕の手を握るつぼみがいた。
普段人前じゃみせない姿に驚きつつも、もう一度好きだよと呟き、手を握りかえす。
二人で見たこの夜のパレード。内容なんて忘れちゃったけど、こっそり交わした約束は、絶対に忘れない。
(いつか僕らがおじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっと手を繋いでいよう)