怪我の巧妙
※遊卯火の零れ火の闇影様から頂いた小説です。無断転載はご遠慮ください。




最近キドは三時のおやつに僕に甘いものばかり作ってくれる。足に怪我をして、動けなくなってから、一日家で療養している僕への当てつけかと思ったけれども、どうやら違うらしい。おやつを持ってくるキドの顔は文句を言いつつもにやにやと笑っていたからだ。


「もうすぐ怪我が治るな」
「うん、そしたら僕また仕事できるよ」

僕の足の包帯を巻き直しているキドはどこか寂しそうに見えた。段々とよくなる僕の足に比例してキドの顔は暗くなる。そんな顔は見たくはない。

「きっとキドも仕事に専念できるよ」
「そうだな」
「…残念?」
「いや……、そうじゃないさ」

曖昧に返事を返すキドに疑問を持つ。なんでキドは泣きそうなんだろう。キドの手を掴んで、目を見て聞いてみる。何か隠し事とかしてない?

「…今回の、お前の足の怪我は大分重症だっただろ」
「まぁ…僕のミスだし、キドのせいじゃないよ」
「それでも、…死ぬかもしれなかった、そう考えたら、ああしてやればよかった、って色んな思いがぐるぐる回ってこびり付いてはなれなかったんだ。正直、お前が家に居る時、すごくホッとした。此処は死ぬ事はない安全地帯だからな…でもまたお前は」
「なんだ、そんなこと考えてたの」

間抜けな顔と間抜けな声を出したキドを抱きしめる。心配してくれてたんだありがとう。伝わるように強く抱きしめる。苦しいと言われても離さない。

「僕はどこにも行かない、これからはもっと気をつける、キドが泣かないようにね」
「泣いてはいない…でも、そうしてくれ」

ようやくキドは笑った。不謹慎だけれども、たまにはまた怪我をして僕にやさしいキドも見たいなぁ、と思った。
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