*カノキド+セト
セトマリ要素有り
両思いなのになかなか思いを伝えようとしない焦れったい二人の幼馴染みはとうとうやっと結ばれた。二人から恋愛相談を持ちかけられてた俺はやっと終わった、と安堵したのもつかの間。まだ俺の災難は終わっていなかった。
「セト、あのさ…相談あるんだけど」
カノらしくない真剣な表情で俺の部屋に訪れた。時計を見れば深夜の2時を回っていた。今日はバイトも重労働だったし早く眠って明日に備えたかったが何やら困っている幼馴染みを無視して眠るほど俺は鬼じゃない。いいっすよ、と返事をして部屋に招き入れた。
「……………」
「……………」
そんなにも話しにくいほど悩んでいるのだろうか。男同士が机を挟んで黙りこむ。なかなかシュールな絵だ。
「キドが…」
「キドがどうしたっすか…?」
カノの次の言葉を息をのんで待つ。付き合って早々なにか問題が発生したのだろうか。それとも喧嘩でもしたのだろうか。普段使わない頭をフル活用して考えているとカノが少し戸惑った後、なにか決意したように口を開いた。
「かわいすぎるんだよっ…!!」
欺いてない本当の表情でカノは顔を真っ赤にしていた。それに対して俺は無表情になるしかなかった。さっきまであれほど悩んでいたのにこんだけ眠いのにカノの相談はノロケ話か。心配して損した。さて眠るか。にやにやしながらキドのかわいさを語っている馬鹿な幼馴染みに哀れみつつ、俺はベッドにて眠りについた。
朝、目覚めると部屋にカノの姿はなかった。良かった、と安堵しつつタンスからいつもの緑のツナギに身を包みバイトへ行くことにした。これでいつも通りの日常に戻れる。そんな淡い思いを抱いていたのがいけなかったのかカノは毎晩のように俺の部屋に訪れては今日のキドは可愛かった、押し倒して襲いたくなった、など正直聞きたくもない話を眠ることも許されず何時間も聞かされ続けた。
「付き合う前は普通に抱きついたりしてたのに、恋人って意識すると恥ずかしくて目も合わせられないよ、なんで!?」
「知らないっすよ」
カノは毎度同じようなことを言うのでいい加減飽きてしまった。
「えー、僕、明日キドと任務なんだけどどんな話しようかな。あー、目合わせられるかな。いっそ抱き締めてキスして…」
カノがうっとりと自分の世界に入っている。正直気持ち悪い。全く付き合ってるキドが少し可哀想だ。とは言っても俺とマリーが付き合ったばかりの頃もそんな感じだったとキサラギさんやエネちゃん、シンタローさん、ヒビヤ君が言っていたし人のことは言えないか。
「うーん…」
どうしたものかと腕を組んで考える。時間が解決するか…いや、カノがノロケ話をするようになってから既に一ヶ月は過ぎている。これはカノの彼女であるキドに何とかしてもらおう。カノを部屋から追い出して眠りについた。
朝、起きてみればキッチンにはやはりエプロンを身に付け、せっせと朝ご飯の準備をしているキドがいた。
「キド」
「ん?あぁ、セトか。おはよう」
卵と牛乳と砂糖に浸けた食パンをフライパンで焼いていたキドが手の動きは止めずに俺の方に向いた。
「うっす!実はキドに相談があるんすけど…」
カノのことで、と付け足すとキドの顔は渋いものになった。
「毎晩のように俺の部屋に来てはキドのかわいさを語ってくるっす」
カノの話の内容をかいつまんで話すとフライパン返しを持ちながら硬直した後、顔から火が出るんじゃないかってぐらいに真っ赤になってプルプルと震えた。
「あーいーつ…!!許さねー」
ガスコンロの火を消してキドは足音を大きくたてて、まだぐっすりと眠っているであろうカノの部屋へと姿を消した。
「…これで良かったんすよね」
カノの部屋からキドの怒りの声とカノのあぎゃっ!?と可哀想な悲鳴とベッドから転げ落ちるような音が聞こえてきたが聞こえないフリをした。出来上がったフレンチトーストを食べてマリーを起こしに部屋へと向かった。
あとがき…
鴉咲様からのキリリクでカノキド+セトで、「付き合う前は普通に抱きついたりしてたのに、恋人って意識すると恥ずかしくて目も合わせられないよ、なんで!?」なカノさんと、毎晩そんな感じの話を聞くはめになっているセトさん。
少し長めになってしまいましたし、セトマリ要素があったりと…色々勝手にすいません!!
リクエストに添えているか微妙ですがこんなんで良ければ、どうぞ!!
鴉咲様のみ返品、書き直し可能ですので気軽にどうぞ!!