雨上がりと君の笑顔



*カノキド




「あ…雨だ…」





雨はあんまり好きじゃない。なんとなく気分が暗く沈むし、自分のこの癖っ毛な髪が言うことを聞かないし。どちらかというと雨上がりの方が好きだ。日が少しずつ出てくるところとか雨上がり特有のあの匂いとか自然を感じるし。





「…雨、すごく降ってるね…キド、大丈夫かなぁ…」





マリーが同じように窓の外を見つめ心配そうに呟いた。キドは朝から任務に出掛けてしまった。珍しく寝坊してジタバタしていたし、天気予報を見る暇もなかっただろうから折り畳み傘も持っていかなかったっけ。セトはしっかり折り畳み傘を持っていってたし。




「……………」





雨音と共に雨粒と段々と強くなり、このままでは雷が落ちそうな勢いだ。怖がりな彼女のことだ。雷が鳴れば、強がりながらも小さく悲鳴を漏らすだろう。これは傘を持ってお迎えするべきだなと判断した僕は傘を二本取って玄関へ向かう。






「あ、キドのお迎えに行くの?」




マリーが危ない足取りでよたよた、と走ってきた。あれ、危ないかも…と思った瞬間にマリーは何も無いところで躓いで僕へと突進してきた。





「うわわわっ!!」





その後は予想通りマリーが僕の傘を壊した。それはもう清々しいほどにポキッという音が雨音だけの静寂な空間に響いた。





「ひえぇぇ!!ごめんなさいごめんなさいぃ!!」





マリーが泣き出すとタイミング良く帰ってきたびしょ濡れなセトにマリーを任せて僕はキドの任務先へと足を動かした。















外は予想以上に雨足が強かった。傘を指して帰ってきたセトがあの様なのだから傘も何も持っていないキドはかなりびしょ濡れだろう。





「あ、」





てっきり任務の帰り道のどこかで雨宿りをしているのかと思いきやキドは雨に打たれながら歩いていた。その姿はあまりに痛々しく見ているこっちが胸が苦しくなった。





「…キドッ!!」





水溜まりの水が服に跳ねるのも気にせず僕はキドに抱き着いた。





「……か…の…?」





キドが僕の姿を見て驚いた後、急いで僕から体を離した。そんな彼女の様子がいつもと変わらず安心した。





「…キド、風邪ひいちゃうよ。どっかで雨宿りして僕に連絡してくれれば良かったのに」





「別に体はお前より強いし。それに…」





キドは目を閉じて少し考えるような素振りをして雨は何もかも流してくれる気がしたから、と小さく呟いた。そのキドの言葉を聞いて僕は悲しくなった。だから、この暗く重い空気をぶち壊すように僕は欺く。





「でもさ、それだけじゃないよね。キドは雷が怖かったから雨宿りしなかったんだよねぇ〜?」





「な!ち、違うっ!!雷が怖いんじゃなくて雷の音が無駄にうるさくて嫌いなだけだ!!」





図星をつかれたせいかキドは顔を真っ赤にしながら否定の言葉を言うがどうも強がりにしか聞こえない。





「あれだ!もう帰るぞ!雨のせいで服がびしょびしょして気持ち悪いし、乾いてきた髪が湿気のせいで髪もボサボサになってるしな!!」





キドは髪を触りながらそう言うと僕が持っていた傘を無理やりぶんどって歩き始めた。





「あ、待ってよー」





急いで傘に入るとキドがギロリと睨んできた。僕はそれを笑って受け流すと傘を持っているキドの手に自分の手を重ねた。





「…たまにはさ」





「ん?」





「雨もいいよね」





雨は嫌いだけれど君が隣にいるだけで案外いいもんだな、とか思ったり。





「あ、虹」





キドが空を見て小さく声を漏らした。空には虹が隣には君の笑顔が眩しく輝いていた。















あとがき…


遅くなってしまいましたが相互御礼としてりん様へ捧げます。


甘い話を書こうと思っていたら何故かシリアス風味な話になってしまいました…汗
こんなもので良かったらりん様のみ、お持ち帰りどうぞ!!


返品、書き直しも受け付けますので気軽にどうぞ!!


改めて、りん様、相互リンクありがとうございます!!
これからよろしくお願いしますね!!

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