*カノ+キド+セト
カノキド風味
「な、な、な…か、カノ…なのか?」
「し、信じられないっす…」
目を何度も擦って繰り返し見ても自分の目の前にいるのは成長した姿のカノだった。
それはあまりに突然の出来事だった。
本当に今日は何にも変わらない日常だったはずだ。
いつもと変わっていたことを挙げるなら久しぶりにアジトには三人の幼馴染みだけがいたことぐらいだ。
数分前…
昔話に華を咲かせ、セトが準備してくれた紅茶を優雅に飲んでいた。
「…でさー、キドったら一緒におばけが怖くて僕たちのベッドに潜りこんできたよね〜」
「あー、懐かしいっすね!!」
「う、うるさいな…それは昔の話だろ!!セトだって怖い本を読んで怖がってただろ」
「今は大丈夫っす!!」
「二人ともあの時は可愛かったなぁ!!」
「そういうカノだって昔は可愛かったっすよ!!キドが布団に潜りこんできたとき顔を真っ赤にしてたっすよね!!」
「…ふーん、お前もそういう純粋な時期があったんだな」
「あーもう!!セト、余計なこと言わないでよ!!キドも違うから僕は今でも純粋だよ!?ピュアだよ!?世界中探してもこんな純粋無垢な子なんて見つからないからね!?」
セトと共にいつもからかってる側のカノをからかいながら紅茶を啜る。
「…苦いな」
砂糖が入っていないのか自分にはまだ早い強い苦味が口に広がる。
「あ、砂糖は入れてないっすよ!!」
「はい」と渡されたビンには角砂糖がたくさん詰められて、何だかオシャレだなと心踊らせながら角砂糖に手を伸ばそうとすると横から伸びてきた手によって角砂糖の入っているビンが奪われた。
奪ってきた元凶のソイツは「お先にいただきまーす!!」と言いながら角砂糖を紅茶が入っているカップにいくつか入れる。
自分も少し甘党だがカノほどではない気がする。
「…おい、カノ!!砂糖よこせ!!」
砂糖がないと紅茶が飲めないというのにコイツはビンを腕に抱えながら紅茶を飲む。
カノはきっと試しに飲んで甘さが足りなかったら足して入れようと考えているのだろう。
横で「二人ともお子ちゃまっすねー」と笑うセトをキッと睨みつつ椅子から立ち上がりカノからビンを奪おうとしたところでカノに手を掴まれ邪魔された。された…だけなのだが…違和感を感じて、眉間に皺をよせる。
「…どうしたの、つぼみ?」
そして冒頭に至るというわけだ。
カノ…に似ているのだが雰囲気が大人っぽく、明らかに違うのが身長が高くなっていて声が低くなっている。
「……どうしたの、つぼみも幸助も黙っちゃってさ」
喋り方は変わらないが下の名前で呼んできたり何だか雰囲気が柔らかいというか大人の余裕を感じる。
「…ど、どういうことなんすか!?か、カノがあのチビなカノがチビじゃなくなってるっす!?」
セトは俺よりも混乱した様子でカノの肩を掴み、ゆさゆさと揺らしながら「どういうことなんすか!?」と言い続けているセトと笑っているカノの二人を横目で眺めながらどこか引っ掛かることについて頭をめぐらす。
「(…あの砂糖か…!?)」
つい先日に起きた事件
カノが持っていた怪しげな砂糖を食べてしまったシンタローが幼児化してしまった、あの事件だ。
確かあのビンは俺の手によって少し割れてしまい、危ないのでとりあえず別のビンに入れ…あの時いなかったセトは知らずに持ってきてしまったのだろう。
あの砂糖は食べた者を本人の望む姿にしてくれる効果がある。
しかし、効果は一時的できっちり30分、30分経てば自然に戻る。
…だから安心していいのだが、
「ねー、つぼみー」
甘ったるい声でぎゅうぎゅうと体をくっつけてくるコイツはどうすればいいのだろう。
「…っ!!は、離れろッ…!!」
そのうちカノはソファーに座ると膝に俺を座らせ更にぎゅうぎゅうと抱きしめ甘い言葉を囁いてくるからどうすればいいのか分からず、どうにか離れようとカノに攻撃を仕掛けようとするが殴ろうにも蹴ろうにも体がカノによって封じこめられてるため怒鳴るしかない。
「キド、顔が真っ赤っすよ」
セトがニヤニヤと笑いながら紅茶を啜っている姿にムカついて「助けろ」と怒鳴ってもニヤニヤと笑うだけで役に立たない。
「……それにしてもこの砂糖の効果は食べた本人の望む姿にしてくれる効果があるんすよね?」
「…あぁ、そうだが…どうかしたのか?」
「…じゃあ、カノの望む姿がこれっていうことなんすかね?」
セトが首を傾げながら紅茶を啜る。
「……じゃあ、コイツは…大人になりたかったのか?」
「意外っすよねー。カノなら身長がキドより高くなりたいとか思ってそうなのに…」
「…そういうお前は何になりたいんだよ」
「まず鳥になって空を思いっきり飛びたいっすね!!あ、あとはカノになってチビの感覚はどんなものかと体験してみたいっす!!」
清涼飲料水のCMばりの爽やかな笑顔で全国のチビを敵に回すような言葉を言うセトに呆れたような視線を送る。
「じょ、冗談っすよ…冗談、半分だけ。そういうキドは何になりたいんすか?」
「……俺は…」
セトに訊かれ自分のなりたい姿とは何か考えてみる。
思い付くのは女の子らしい姿をした自分…
「…あ゙ー、どうでもいいだろッ!?」
「えー」と不満そうに唇を尖らせるセトの頭にタンコブをつくってあげた。
それから30分経ってカノが戻ったときカノが鼻血を出して倒れてしまったのはまた別の話である。
あとがき…
氷華様からのキリリクでカノ+キド+セトでギャグ
ギャグでもないしカノキド+セトっぽいし、やたらと長いしアンソロジーの話を少し使わせてもらっているという微妙なものですが持ち帰りどうぞ!!
氷華様のみ返品、書き直し可能ですので気軽にどうぞ!!