煌めく世界ときみ









「はあ…何やってんだ、俺」





まさか俺が女の子と二人っきりで花火大会とかそんなリア充的なアレが出来ると思っていなかったのについ先日女の子から誘われてしまった。





(でも、まぁ…女の子っていうより男友達って気もするけどな)





女の子に限らず男友達なんて一人もいないわけだが…。
友達と呼べるのもアヤノぐらいしかいない。





「シンタロー、お待たせー!」





俺の思考を止めるかのように肩をトントン、と叩かれた。
やっと来たかと振り返るとそこには浴衣姿のアヤノがいた。





「………………」





何も言葉を発することが出来なかった。
今、浴衣の素晴らしさに気付いた。
いつも下ろしている髪はアップにされ、普段拝めることの出来ない白いうなじが目に止まる。
心拍数が上がるのと鼻息が荒くなっていくのを自分で感じた。




「えっと、シンタロー…?」





アヤノが俺の頬をつんつん、と突っついてくる。
ちくしょう、可愛いじゃねーか。
もちろん、そんなことを本人には絶対に言えない。





「花火が始まるまで時間あるし、屋台でも見るか」





なるべくアヤノと目を合わせないようにふい、と視線を反らして歩く。
今のアヤノを見ていると自分が自分じゃなくなるような気がした。
そのぐらい浴衣の破壊力は凄まじいものだった。





「う、うん…」





見るからにしょんぼりとした声色は自分に対して気があるんじゃないかと都合の良いことを考えてしまう。
そんなことあるはずもないのに。
そもそも恋愛とかそういうキャッキャッウフフなことには全く興味を示なさそうだ。
恥ずかしさを紛らわすように人と人の合間をすり抜けて歩く。
相変わらず人が多い。





「ま、待ってよー」





アヤノが慣れない下駄でひょこひょこ、と走ってくる音が聞こえる。
俺は聞こえない振りをして歩く。





「早いよ、シンタロー!」





やはり、アヤノは俺より何倍も運動神経がいいのかあっという間に追い付かれた。
強い力で腕を引っ張られて仕方なくアヤノに視線を向ける。
白くて柔らかそうなマシュマロを思わせるような頬を少し膨らまして怒っている。
ちくしょう、あざとい。





「浴衣なんかで来るからいけないんだろ」





あ、また言ってしまった。
照れ隠し。
俺の悪い癖。
思ってることと反対のことを言っている。
何で傷つけるようなことしか言えないんだ。





「…そ、そうだよね。私、馬鹿だよね…」





あはは、と力なく笑うアヤノをなんとかしろ!と自分の頭に訴えかける。
アヤノはいつも馬鹿みたいに笑っているが何を言われても傷つかないというわけではない。





「わ、私!なるべく早く歩くね!」





気まずい雰囲気を壊すようにアヤノが歩き出す。
石に躓いたのかアヤノの体が前に傾く。





「アヤノッ!」





咄嗟にアヤノの手を掴む。
アヤノの手はひんやりとしてて冷たかった。
そして、自分より全然小さいことに驚いた。
アヤノも女の子なんだと嫌でも思い知らされた。





「わっ、危なかった…!シンタロー、ありがとねっ!」





アヤノが勢いよく振り返ると微かにリンスの匂いがした。
そしてアヤノと触れてる部分が熱を持ち初めてとても熱かった。





「…今度からは気をつけろよ」





少しぶっきらぼうに返せばアヤノが小さく笑ってそれがなんだか自分の思っていることを見透かされてるようで恥ずかしかった。





「ね、シンタロー」





「なんだよ」





なんとなくまだ手を繋いだまま歩く。
屋台は人が並びすぎて花火を見る所ではなさそうだと判断した俺たちは花火を見る場所を探す。





「こうやって手を繋いでたらどんなに人がいてもはぐれないね」





「そうだな」





表面上は冷静を保ってるが内心、手は汗でベタついてないかとか頬は緩んでないかとか心配の種が尽きない。





「私ね、いい場所を知ってるからそこに行こ?」





「嫌だと言ってもどうせ行くだろ、お前なら」





他人の嫌がることは決してしない。
そういう線引きが分かるからこそアヤノはぐいぐいと強く引っ張っていけるのだろう。





「えへへ、正解っ!」





見るとこっちまで頬が緩んでしまうような顔でアヤノは笑った。










「着いたぁ!」





「…や、やっと…着いた…」





アヤノに連れてこられたのは喧騒から少しはぐれた場所だった。
ここからだと祭りの様子が上からよく見える。
人混みが苦手な俺のことを気遣ってくれたのかと考えると頬が熱くなっていくのを感じた。





「ほら、シンタロー!ここに座ろっ」





アヤノはベンチに座りながら足をぶらぶらさせてこちらに手招きをした。
俺がベンチに座るとヒュー、という音がしたかと思いきや次の瞬間バーン、と大きな音が響きわたった。





「見てみて、シンタロー!」





「…綺麗だな」





「うん、綺麗だね…。あのね、シンタロー」





「ん?」





「私ね…絶対にこの日を忘れない。シンタローと見た…この花火をずっとずっと覚えてる」





そう言ったアヤノの横顔は花火に劣らず、とても綺麗だった。




















あとがき…


梓恩様からのリクエストでシンアヤで花火祭りの話です。


リクエストして頂いた時期はとてもぴったりな内容だったのに私のせいで季節感0になってしまい大変申し訳ありませんでした。


ちゃんとご期待に沿えたかどうか…汗
シンタローがヘタレすぎてすみません(><)


梓恩様のみ、お持ち帰り可能です!


また、梓恩様のみ返品、書き直し可能ですので気軽にどうぞ!





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