曖昧な告白






窓から射し込んでくる8月の強い日差しになす術もなくソファーに項垂れる。
さっきまで冷たく感じたのが嘘のようにソファーは熱かった…というより俺の汗のせいだとは思うが。
クーラーが壊れたせいでアジトは外と同じくらい…いや、外以上に熱がこもっていた。





「行けば良かったな…」





海に行ってみたいと前から言っていたマリーをセトとキサラギとエネが嫌がるシンタローをノリノリで連れて行った。
その時に俺も誘われたがこんなクソ暑い日に外に出るのが嫌で断ったのだがまさかクーラーが壊れるなんて予測していなかった。





「キドー」





そして、こんなクソ暑いのに抱きつこうとしてくる馬鹿…カノと二人っきりという現状に俺はますます眉間に皺を寄せる。





「なんだよ」





「プール行こうよ」





「やだ」





「え、即答!?」





カノがわざとらしく床に倒れこみながらプール行きたいなぁー、とチラチラとこっちを見ながら呟くその姿にイラッときた。





「お前のことだから、どうせ、よからなぬことでも考えてんだろ。あと床が汚れるから寝転がるの止めろ」





「いやいや、そんなこと考えてないしね?あと、僕の服じゃなくて床が汚れるって相変わらずキドったら酷いっ!」





カノが息継ぎもせず一息で喋り終えるとパーカーのポケットから何やらチケットを取り出す。





「無料券か…?」





「ピンポーン!セトのバイト先らしいからセトから貰っちゃった!ちょうど二人分だしさ〜。ね、行こうよ」





「…でも俺、水着…ないし」





あるにはあるのだがキサラギとマリーに無理矢理買わされたビキニしかない。
俺はキサラギ程、胸が大きくないし、スタイルに自信もない。
それに何よりもカノに馬鹿にされたくないという思いが強かった。




「あれ、キサラギちゃんとマリーと一緒に水着買いに行ったんでしょ?前にマリーが嬉しそうにセトに話してるの見たけど?」





カノがニヤニヤと楽しそうに笑っている。





(絶対にコイツ楽しんでるな…)




「…………でも、水着似合わないし」





「いーやっ!キドは絶対に似合うよ!僕が保証する」





その自信はどこから湧き出るのだろうか。
でも、悪くない気持ちだった。





「じゃあ、行くか」















たどり着いたプールは市営プールよりも何倍も大きくてどこかのリゾートプールみたいだった。
アトラクションはいっぱいあるし、流れるプールや波のプール、滝のプールなどその他にもたくさん。
売店には種類豊富なアイスやたこ焼き、焼きそば、お好み焼きなどたくさんある。





「す、すごいな…」





キョロキョロと辺りを見回しているとカノが肩をトントンと叩いてきた。





「キドもすごいよ。全然似合ってるじゃん、水着」





「…あ、ありがとう」





面と向かって言われるのはなかなか恥ずかしい。





「パーカー脱いじゃえば?せっかくいい体してるのにさ〜。僕が脱がしてあげようか〜?」





ニヤニヤとしながら手をわきわきと動かすカノはどう見ても変態そのものだ。





「あそこのプール監視員に差し出してほしいんだな」





ガタイのいい男性を指差す。





「う、うーん…遠慮しとっこうかな…」





「よし。じゃあ、さっさと入るぞ」





カノの腕を掴んでゆっくりと浸かるといつものキャラとか忘れて冷たい、と笑っているとカノにジーッと顔を見つめられた。





「な、なんだよ…」





「いや、楽しそうだなぁと思ってさ」





「べ、別にいいだろ…久しぶりに入ったんだから」





なんか子供っぽかったかもなんて考えて今さら恥ずかしくなってきた。





「そっか。じゃあさー、スライダー行ってみようよ!」





そう行ってカノが指差したのは長い長い滑り台みたいなものだった。
見る限りかなりの速さだ。





「…………」





「大丈夫だよ、キド。鼻を摘まんでいれば鼻に水は入らないよ」





「こ、怖くないか…」





「怖いなら一緒にくっついて滑る?間違って変なところ触っちゃうかもだけど」





「よし、行くぞ」





「え、無視…?」















「どうだった?」





「怖かったけどなかなかクセになるな…」





あまりの速さに顔が引きついて水に落ちた瞬間は気絶しかけたがなかなか楽しかった。





「じゃあ、次は滝のプール行こうよ」


カノに腕を引っ張られるがままに色んなプールに行く。





滝のプールではカノの顔面に滝を直撃させたり、流れるプールでは一緒に流れを逆らったり、波のプールではカノが浮き輪をサーフィンのようにして波が来たら見事に浮き輪から落ちたり、気づけば空は夕暮れに染まっていた。





「もう、そろそろ帰ろっか」





カノの言葉に無言で頷く。





「今日は楽しかったね、キド」





「…そうだな」





今日は本当に楽しかった。
嫌なことも何もかも忘れて子供の時みたいに笑った。





「来年もまた一緒にプール行こうよ」





「みんなでか?」





「ううん、二人で」





「は…?」





てっきり…うん、と返事が返ってくると思いきや意外な返答に驚きが隠せないでいた。





「今日のキド可愛かったし、他の誰にも見せたくないからさ〜。」




その軽い言葉はいつものカノなのにカノの顔が真っ赤だった。
よく見れば、耳も首元まで赤かった。





「どうしたんだお前。顔が赤いぞ…?」





カノの頬に手をやろうとしたがカノが俺の手首を掴んだ。
掴まれた手首がどんどん熱くなっていく。





(…意外と俺より手が大きいんだな)





掴まれた手首と掴んでいるカノの手をジーッと見る。
手の色もカノの方が日焼けしていて、カノの方が少しゴツゴツしているように見える。





「…あの…さー、まだ気が早いと思うんだけどさクリスマスとか…僕はキドと二人っきりで過ごしたいとか思ってるんだけど…僕の言いたいこと…わかる?」





「…別に、いいけど…」





ーーなんだか無性に恥ずかしかったーー




















あとがき…


三ツ星様からのリクエストでプールに行ったカノキドです。


プールに行くまでが長いし、プール要素が少なくてすみません。


文も相変わらずめちゃくちゃで適当ですいません…泣


三ツ星様のみ、お持ち帰り可能です!


また、三ツ星様のみ返品、書き直し可能ですので気軽にどうぞ!






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