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We are happy togeter now.
「ただいま〜…」
暑い中、買い物のため外出していたカノは帰ってきた途端、情けない声を出しながらソファーへと倒れこんだ。
「…お帰り、すまないな」
エコバッグに入っているカノが買ってきた物を素早く冷蔵庫に入れていく。
「ホント、酷いよキド…さすがの僕でもこの炎天下は辛いよ…」
カノは着ていた黒いパーカーをソファーの上に乱暴に脱ぎ捨てると手でパタパタと風を送りながら暑いー、と叫びながらエアコンのリモコンへと手を伸ばすカノを睨み付けるとビクッと震え、手を引っ込む。
「いや、でも今日はホント暑いよ…キドはえろ、じゃなかった涼しそうな格好だね」
「…お前、何を言いかけた」
何かとても不愉快な言葉を言われかけた気がする。
「い、いや…何でも?」
カノは冷や汗を垂らしながらもやっぱり笑う。
「ふーん、…って、あ!!」
エコバッグに頼んでいた物が入っていなかった。
「どーしたの、キド」
カノはソファーに寝転がりながら顔をこちらに向けている。
「…お前、卵買ってきてないぞ?」
今日は卵が安い日だから必ず買うように頼んだのだが、欺くことも忘れて青ざめているカノを見るとやはり忘れたらしい。
「……はあ」
「ゴメン、ねー、キドー、ごめんってばー」
わざとらしく溜め息をつけばカノが慌てて謝ってくるが本当に反省してるのかと疑ってしまうぐらいカノは軽い感じで謝罪の言葉と言い訳をペラペラと言う。
「…もう一度、店に行って卵を買ってこい」
「えー、めんどくさ…くもないですね!!今、すごく卵を買いたい気分!!」
めんどくさいと言いかけたカノに見せつけるように拳に力を入ればカノは冷や汗をかきながらエコバッグを手に取る。
「行ってきまーす!!」
カノが逃げるように外へ出ていくのを見送ってからカノが買ってきてくれた雑誌でも読もうかとソファーに行くとそこには乱暴に脱ぎ捨てられたカノの黒いパーカーがあった。
「…はあ、全く。もう着ないなら洗濯に出せよ…」
ぶつぶつと文句を言いながらパーカーを手に取る。
「…………意外に大きいな、それに……」
パーカーを試しに着てみると意外に大きくて、カノの匂いがした。
カノに抱き締められた時みたいだなぁとか考えていたら熱を出した時みたいに顔が熱くなった。
しかし脱ぐことはせず、ソファーに寝転がる。
「……ん、なんだか…眠く、なって…きた」
「ただいまー!!」
うとうとしていると扉を開ける音が聞こえて、音がした方に目を向けるとそこには珍しく驚いているのか目を見開いているカノがいた。
「おかえり、カノ…?」
カノは卵が入っているであろうエコバッグをその場に静かに置き、こちらまでにやついた笑みを浮かべながら近付いてくる。
なんとなく嫌な予感がして真夏だというのに寒気がした。
「あっれー!?僕のパーカーがないなぁ…ここに置いといたはずなのになぁ!!」
「…あ」
言われて今、気づいた…。
カノはおかしいなぁ、とわざとらしく大きな声を上げて自分を見つめてくる。
「あっれ〜、キドのその着ているパーカーって…」
「あー、もう!!悪かったなっ!!」
パーカーを脱いでカノに押し付けて体を離そうとすると背中に腕を回され抱き締められた。
「つかまえた」
耳元で囁かれ、体がビクッと震える…ホント、心臓に悪い。
カノは満足そうに俺の髪を撫でる。
「…か、カノ…?」
久しぶりの温かい感触と優しい匂いに顔が熱くなる。
「えへへ…キド、顔が真っ赤でかわいいー」
「…うっさい」
「怒らないでよ〜、最近こうやってぎゅう〜ってしてなかったからさ…久しぶりに、ね?」
「うー、そ、それもそう…だな」
「…それにさ、好きな女の子が自分のパーカーを着てたら襲いたくなるもんでしょ?」
「バカ」
でもそんなやつが愛おしいとか思ってしまったり…。
「…幸せ、だね」
カノが噛みしめるように呟き、更にぎゅっと強く抱き締めてきて俺も同じように力をこめる。
「カノ、好き」
いつもならそんなこと言えないけど、こういう雰囲気でなら不思議と言える。
「僕もキドが好きだよ」
カノにこうやって言われるときが幸せでこんな幸せがいつまでも続くことを願った。
We are happy togeter now.
(私たちは今幸せです)
あとがき…
ぐだぐだ感が半端ない…甘くて幸せなカノキドが書きたかった…