好きって言ってほしい
「キド、大好きっ!!」
「キド、愛してるよ…」
「キドのそういうところ好きだよ」
「ねぇ、キド!!好き好き大好き!!」
「団長さんも大変ですね」
キサラギがいつものようにとても女子高生が食べるような物ではないあたりめを食べながら少し苦笑混じりに言う。
「まあな…」
読んでいた雑誌から目を離し視線をキサラギに向け、俺も苦笑混じりに言う。
「キードー、大好きー!!」
いまだに叫んでるカノにうるさいと怒鳴っても黙るのは一瞬だけ。
めんどくさくなって今は完全放置状態。
「カノはキドのこと大好きなんだね!!」
マリーがまるで幼い子供を見る母親のように笑う。
「カノは昔からあんな感じだったっすからね!!」
セトが「やれやれ大変っすねー」とニヤニヤと笑う。
お前カノみたいになってるぞ…とは言わない言ったらセトが傷つきそうだし。
「昔はあそこまで酷くなかっただろ…」
俺の記憶が正しければ、あそこまでしつこく「好き好き」とは言っていなかった気がする。
「ねぇ…キードー、聞いてる…?」
カノが俺の肩に触りながら、「ねえねえ」と話しかけてくる。
「あー、聞いてるぞ。聞いてる聞いてるー」
わざとらしく棒読みでそう答えれば予想通り途端に唇を尖らすカノ。
「キドキドキードー!!」
「うるさい、黙れ」
睨みをきかせばカノが笑顔のまま石のように固まる。
呆れたように溜め息をつけば、いきなり腕を引っ張りカノの部屋に連れ込まれた。
「たまにはキドからも好きって言ってよ。僕たち、恋人でしょ…?」
壁に押し付けられたと思ったらカノが耳元でいつもより低い声で囁くように言われ何故かだんだん体の温度が高くなっていく。
「い、言いたくない…」
自分の気持ちを素直に言わない、だから彼を不安がらせてるのは分かってはいたけれど…やはり言えない。
言おうとして開いた口も数秒経てば、また閉じる。
そんなことを繰り返してなかなか言おうとしない俺を見てカノは苛ついたように俺の手首を掴む。
「僕ばっかり好きみたいじゃん…。キドは僕のこと好きじゃないの?」
カノが欺いていないからか頬を赤く染め、眉を八の字にしながら俺を見つめている。
こんなにも彼は自分を愛してくれてるのだと思うと不思議な安心感が自分を占めた。
今なら素直に自分の気持ちを言えるかもしれない。
「…す、好き…」
火照った顔を隠すようにカノの胸板に顔を埋めるけれどきっと顔が真っ赤なことはバレてるかもしれない。
「よくできました」
カノが頭をぽんぽんと撫でてきたが俺はその腕を払わず撫でられる感触を楽しむ。
「今日は珍しく甘えん坊だね」
顔を見てなくてもカノがくつくつと笑ってることはわかった。
「今日、だけ…だからな」
「はいはい」
カノが俺の手首から手を外すとギュッと体を抱き締めてきてた。
こうやって素直になるのもたまには良いかもしれない。
俺はどこか満足した気持ちでカノの背中に腕をまわした。
あとがき…
好き好き言ってるカノさんを書きたかったのに途中でシリアス気味になったのはなぜ…?
今度はキスさせてあげたい