気まぐれな彼
「キドってさ、でれないの?」
夕飯の支度をしてるとソファーでさっきまで暇そうにしていたカノが冒頭のセリフを突然言い出した。
「は…?何が」
俺は突然の話題に戸惑いながら一応返事をする。
「いやぁ、デレデレになったキドが見てみたいn…って、いたたたっ!!」
ソファーに座っているカノのとこまで行き、カノの腕の薄っぺらい肉をつねる。
「ぶっ殺されたいか…?」
カノの腕から指を離し睨み付ける。
「殺されるのは勘弁したいなぁ。でも、まぁ…そういうキドも僕は好きだけどね」
そんな俺に怯えることなく、サラリと爆弾発言をする。
しかも、こういう時だけは欺いておらず真剣な顔をしているから困る。
「なっ!?」
ついマジマジとカノを見つめ、額に手をやる。
…熱は、ないな。
「やだなぁ。僕は本気だよ?」
カノは苦笑しながら俺の腕を掴み顔をグイッと近づけてきた。
「!?!?」
突然の出来事とあまりの顔の近さに何も言えず口を金魚のようにパクパクと動かすことしか出来なかった。
「……僕が本気だってこと試して…みる?」
「……あ、う…。え…?」
どうしようもなく火照った顔が熱くて上手くカノと目を合わすことが出来ない。
「じゃあさ……なんなら、キス……してみる…?」
カノが妖しげに微笑む。
「な、何でそうなるんだ…」
「理由なんて必要?」
まるで行動を起こすのに確固たる理由なんて不要と言いたげだ。
理由こそ欲しいのに…
「ねえ、さっき言ったじゃん。僕はキドが好きだからだよ」
カノは俺の頬を撫でると顔を更に近づけてきた。
「…ッ!!」
ぎゅっと目を閉じてもいつまで経っても唇に何の感触も感じず不審に思って閉じていた目を開けば目の前にはニコニコと笑うカノの姿。
「…キスはまた今度にしよっか」
カノは俺の唇に人差し指で触れながら、そう言った。
「…あっそ」
キスされると思って、つい目を閉じた自分が酷く間抜けに思えた。
「今度しよ?それまでお預けね?」
ニヤニヤと笑いながらカノは俺にぎゅうぎゅうと痛いぐらいに抱き締めてくる。
「はあ…」
癖のあるカノの髪を撫でながら思わずため息をつく。
「不服?」
カノはケタケタと笑いながら訊いてくる。
その様子は俺の様子を楽しんでるみたいだった。
「お前の気まぐれには慣れた」
「さすが、キド!!僕のこと、よく分かってるねぇ」
「で、いつなんだ。その…キス、するのは」
「んー、僕がしたいとき」
平然とそう言うカノに呆れたような冷たい視線を投げかければカノはそれでも落ち込むことなく笑う。
相変わらず猫みたいで掴めないやつだと俺はため息をついた。
あとがき…
気まぐれなカノとそれに振り回されるキドさん
猫みたいなカノが好きです