やっぱり君が好き
苦しいな。
どれが本当の自分か分からなくなって、いつも笑顔を貼り付けて
いつ笑顔を貼り付けなければいい?
みんなが僕を変な目で見るんだ
まるで化け物や怪物を見るような自分と違う生き物を見て恐れているような目で僕を避けて、置いていくんだ。
―待って!!待ってよ…!!
いくら叫んでも声は届かず遠くから楽しそうな笑い声が聞こえてくるだけ。
―僕を一人にしないで
一人は寂しい
辛い
悲しい
苦しい
「た、す…けて…」
「大丈夫か」
目を開ければ視界いっぱいに広がる心配そうな表情をしているキドの顔。
夢、か。
先程の夢の内容を思いだし自嘲する。
ホッと息をつきベッドから起き上がり「大丈夫だよ」といつものように笑顔を貼り付ける。
そんな僕を見たキドが眉間に皺をよせると額を軽くデコピンしてきた。
「…うなされてただろ」
「…聞こえちゃってたかぁ」
おちゃらけた風に言ってどうにか話を逸らそうと思ったがキドはそうさせてくれず僕をジーッと見つめてきた。
真っ直ぐな瞳、セトとはまた違った意味で何もかも見透かされてしまいそうなキドの目から視線を逸らせば頬を掴まれた。
そしてギューッとつねりはじめる。
「いひゃいよ…」
「お前は馬鹿だ。大馬鹿、野郎だ…」
キドはそうポツリと呟くと瞳から涙をこぼしはじめた。
「へ、キド…?」
「なんで、お前はいつも…そうやって一人で抱え込むんだよ。もっと俺たちを頼ってくれよ」
「…ゴメン」
泣かせたくない、笑顔でいてほしいと願って僕は笑顔を貼り付けていたのにいつの間にか彼女を喜ばせていた笑顔が彼女を悲しませる笑顔になっていたことに言い様のない悔しさを感じる。
「もう、お願い…だから」
僕に抱き着きながら掠れた声でキドは必死に言葉を紡ごうとするのを黙って聞く。
「無理をしないで、私を頼って。修哉は一人じゃないから」
キドは更にギュッと力を込めて、抱き締めてきた。
「…僕、もう我慢…しなくていいの…?つぼみに頼っても…いいの?」
何故か喉がカラカラで喋るのが精一杯になってまばたきをしてしまえば涙がこぼれてしまいそうになり、それを必死に抑える。
「当たり前だろ。今度は俺がお前を助ける番だから」
「……ありがとう」
キドの背中に腕を回しぎゅっと力を込めて抱き締めれば、それに応えるようにキドもぎゅっと力を込めてきて、顔を見合わせて笑った。
―やっぱり僕、君が好きだなぁ
―君のとなりにいてもいいかな、本当の笑顔で笑えるようがんばるから
あとがき…
切甘な話
ディセイブを聴いてから、キドさんにしかカノを助けられないと思ったので
最後の文いらなかったかな…