はじめての温度
両親がいない自分は家族の温かさを知らない、人の温もりも知らない。
ましてや人に見られない私は人の温もりなんて感じることなんてないのだろう。
「………………」
私は部屋の隅っこで体育座りして楽しそうに遊んでる子達を見ていた。
『仲間に入れて』
その一言が言えなかった、それは私の人見知りな性格もだけれど大きな理由は私が言ったって誰も気づいてくれないから、それがすごく寂しくて、辛くて、どうしようもなく泣きたくなって泣いたって誰も気づいてくれなくて…私は今日も自分の殻に閉じ籠っていた。
「…ねえ!君は遊ばないの?」
薄い色素の猫みたいな癖っ毛に黒いパーカー、そして人懐っこい笑顔をしている男の子に突然声をかけられて肩がビクリと震えた、全く心臓に悪い。
「ねえ、聞いてるの?」
あれ、もしかして私に話しかけてるの?
え、なんで見えないはずなのに、なんで…
「…わ、私に話しかけてるの…?」
確かめずにはいられなかった、もし…それで私じゃなくて別の誰かに話しかけてたなら私はショックで立ち上がれなくなる。
「…? 君しかいないじゃん」
男の子は当然のようにそう言ったあと、体育座りをしている私の視線に合わせてしゃがみこんだ。
「…な、なに…」
目をジーッと見つめられ、なんとなく居心地が悪い、目を逸らそうにも男の子が手で私の顔を固定してきたからとうとう私は視線を泳がせることしか出来なくなっていた。
「……泣いてたの?」
男の子がポツリと呟いた。
「……泣いて、ない」
つい意地を張って嘘をついてしまった、泣いてたなんて恥ずかしいからバレたくなかった。
「そう?」
男の子はそう言うと私の体を抱き締め、背中を一定のリズムでポンポン、と叩いてくれた。
年も体の大きさもそう変わらないはずなのに彼はどうしてこんなにも大人みたいな優しさを持っているのだろうか。
「…辛かったでしょ、もう我慢しないで泣いていいんだよ」
そう言われて私は体の力が抜けて今まで以上に大きな声をあげて泣いた。
それはたぶん、悲しいとかじゃなくて嬉しくて泣いた。
もう我慢しなくていい、それは私が望んでいた言葉だったのかもしれない。
彼から伝わる温もりを感じながら私は幸せを一つ噛み締めた。
あとがき…
ぐだぐだ…一応、名前が一切出てないけどカノキドだよ!!
幼少ネタのつもりだけど…カノが大人すぎる…セト、どこへ行った。