変わらないもの
「……カノって意外と手が大きいよな」
隣でジッと僕の手を見つめるキドがそこにいた。
「…そうかな?」
キドに言われ自分の手を眺めるが随分頼りない手だと自分で呆れてしまった。
キドではないもう一人の幼馴染みの大きい手を思い出し、溜め息をつくと隣にいるキドが不思議そうに首を傾げた。
どうして二人っきりのときはこんなにも彼女は女の子らしい仕草をして僕を興奮させるのだろうと疑問に思いながらキドの頭を撫でれば嬉しそうに顔を綻ばせる様子を見て僕も同じように微笑む。
「……カノの手は暖かくて安心するな」
キドは昔のようにふにゃりと可愛らしく笑いながら僕の手を取った。
キドの手は少し強く握ってしまうえばすぐに折れてしまいそうで優しく握る。
「…キドの手も暖かくて安心するよ」
指を絡ませればキドが少し驚いたがすぐに嬉しそうに笑い、ここにいると確かめるように繋いだ手をギュッと力を込めた。
キドがまだ能力を扱いきれてないときはよくこうやって手を繋いだり抱き締めてあげたりしてあげたことを思い出して涙が出そうになったのを慌てて抑えた。
「…俺より身長が小さいのに手が大きくて男の人みたいに少しごつごつしてるな」
なんでそんなこと言うかな…そう言われるともっともっとキドのことを意識してしまうのに…きっとキドは無意識に僕のことをドキドキさせられる天才なのかもしれない。
「……キドさん、身長小さいは余計じゃない?」
バクバクとうるさい心臓の音を隠すように欺き、笑う。
「…そのうち越すさ」
「そう、かな…?」
キドよりも背が高くなった自分なんて想像出来ない、けれどそんな未来があるなら僕は今よりも自分に自信を持つことが出来るのかもしれない。
「…あっという間だろ、きっと」
僕の思いを察したのかキドが励ますように僕の背中をぱんぱんと叩く。
「そうだといいんだけどね」と笑い横目でキドを見れば嬉しそうに、けれども少し寂しそうな表情をしながら繋がれている手を見つめていた。
「二人と一緒がいい」と「男に生まれたかった」と言っていた幼い頃のキドの表情と今のキドの表情があまりに似ていていて…
「…まだ男に生まれたかったとか思ってるの?」
つい思ったことをそのまま口にしていた。
「いや、ただ…カノもいつかはどこかに行っちゃうのかと考えてただけだ」
一人になることを極端に嫌っているところも昔と変わらない、変わったように見えて本質的にはキドは何にも変わっていないのだ。
「…ずっと、一緒にいるよ。キドがうざがっても僕はキドのことが大好きだから…死ぬまで一緒に生きていくよ。」
プロポーズみたいな恥ずかしいセリフだけれどこの気持ちに嘘はない。
「…カノ、ありがとう。お、俺も…大好き」
その笑顔はやっぱり幼いころの君と重なっていて、やっぱり変わらないね。
あとがき…
ほのぼの甘を目指してたら結局シリアスに…汗