「よっ」
「…千秋」

アパートの前まで来ると、火の付いていないタバコをくわえた千秋が立っていた。
相変わらずのお人好しといえばいいのか、お節介と言ってしまっていいのか…。いつまで千秋は俺のこと子供だと思っているんだろう。
ポケットから部屋の鍵を取り出しながら千秋に笑顔を向けた。

「泣いてるかと思った。清々しい顔しちゃって」
「ばーか」
「ユキは会いに行かないと思ってた」

玄関のドアを開けると当たり前のように千秋も一緒に部屋に上がり込む。
さっきは気付かなかったけどコンビニ袋を持っていたらしい。それをまたしても当たり前のようにテーブルに置いてソファに腰かけた。
ネクタイを緩めながら俺もその隣に座る。

「ん」

テーブルに置いた袋から缶ビールを取り出して渡された。
なにも言わずに受け取ってフタを開ければプシュッと小気味のいい鳴る。その音を聞いたからなのか、急に喉が乾いてきてビールを一気に胃に流し込んだ。

「ありがと」
「俺なんもしてねえけど」
「ずっとずっと千秋に支えられて来たから」
「ユキのこと、俺が支えなきゃって…いつからかずっと思ってた。…けど、少し前からお役ごめんだなっても感じてたよ」

缶ビール片手にお礼を言ったら寂しそうな顔で千秋に髪の毛を乱雑に掻き乱された。

「千秋…ありがと」
「幸福。お前、今度こそ幸せになれよ!じゃないと俺が報われねぇだろ」
「なんだよそれ」

語気を強めながら指を指されてビシッ、と、そんな音が聞こえてきそうだ。
千秋の指を払い除けて持っていたビールを一気に飲み干した。

「酒豪だからって呑みすぎんなよ。じゃ、顔見に来ただけだから」
「え?帰んの?」

まだ千秋が来て5分も経ってない。
立ち上がった千秋を引き留めようとしたと同時くらいにインターホンの機械音が部屋に響いた。
こんな時間に誰だよ、なんて思いつつ、もしかしてキラキラの頭をしたあいつなんじゃないかと期待している自分。



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