「あのですね。鳴海さんと、由香さんの過去を教えて欲しいと思いまして…それで電話しました」

妙にかしこまったような言葉遣いでさっきの電話の用件を話す。

「ほんとは千秋さんに教えて貰おうと思って聞いたんですけど、卑怯だって怒られちゃって」

そんなことまで言わなくていいのに…とか思いながらも、馬鹿正直に千秋に聞いたということを教えてくれて少し嬉しい。
ばつが悪いのか、頭をガシガシと掻いて視線を右へ左へと忙しなく動かしまくる。

「ばーか」
「返す言葉もないです」
「バカだなお前。ばかばかばーか、バカ沢」

子供のように罵倒の言葉を吐けば、シュンとしょげて黙り込む。
持っていたコップをテーブルの上に置いてから慰めるようにポチの頭を軽く撫でた。

「最初っから直接聞いてこいよ。…なんでも聞いていいってさっき言っただろ?」

千秋から電話がきて呼び出される前のことを思い出して、怒ったような口調でそう告げると、小さく微笑んだポチに頭を撫でていた方の手首を掴まれてしまう。
少しだけ心臓がどきりとしたけど、唾を飲み込んで気を紛らわした。

「鳴海さんと由香さんの間に昔なにがあったんですか?」
「別に、お前が思ってるほど大したことじゃねぇんだけどさ…」

俺の手首を掴んで離そうとしないまま質問される状況に、今度は俺が目線を泳がせながら口を開く。

「由香とは結婚を前提に付き合ってたって言ったよな?」
「はい。聞きました」
「結婚する直前で、別れたんだよ」

ポチの方は向かないでテーブルの上のコップを凝視していたら、不意に膝に手を乗せられた。
無意識に貧乏揺すりをしていたらしい。俺を落ち着かせるように膝に手を当てるポチに心が安らぐ。

「俺も、普通に別れたんだったら普通に悲しんで終わりだったと思うんだよ」
「普通じゃ、なかったんですか?」
「なんて言うかな…。ベタなドラマでさ、教会で花嫁が他の男に連れ去られるシーンとかあるだろ?」

首を傾げてポチを見遣れば、肯定するように頷く。



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