「なーんか変な組み合わせ」

ポケットに手を突っ込んだまま近付いてくる正臣は、声だけでなく、その足取りも弾んでいる。

「九条には関係ないだろ」
「千秋さん、名前覚えててくれたんだ」

女の子たちが見たら卒倒してしまいそうな爽やかな笑顔を千秋さんに向ける正臣は、ほんとなんでバイなんだろうって不思議に思う。
こんなに格好よけりゃ女なんてより取り見取りだろうに。

「あれ?正臣、千秋さんと会ったことあったっけ?」
「ん、あぁ。今日の昼間に鳴海さんと会ったときにな」
「えー!なんで正臣が鳴海さんと会ってんだよー!」

自分の知らないところで正臣が鳴海さんに会ったってことが気に食わなくて唇を尖らせながら文句を言ったら、諭すように謝られた。

「ま、いいけどさ。正臣、俺んち来ようとしてたんだろ、なに?」
「…鳴海さんとのこと、聞こうと思っただけなんだけど」

千秋さんのことを一瞥してから俺に向き直ってそう言われた。

「なんか無理そうだからいいわ」

背中をバシバシと強く叩かれて痛い。けど、気合いを入れて貰った気分になって少しだけ緊張が解けた気がする。

「……千秋さんてさ、鳴海さんのこと好きなの?」

いまだポケットに手を突っ込んだままの正臣がなんの前触れもなく真面目な声色で不機嫌そうな千秋さんに問い掛けた。
正臣の急な質問に、千秋さんはもちろん、俺も驚く。

「あ、もちろん恋愛感情でってことね」
「正臣!なに聞いてんだよ」
「九条には関係ないだろ」

突拍子もない発言に目を丸くしながらも千秋さんの返答を聞きたくなくて正臣を止めようと声を出す。
千秋さんも答える気は毛頭ないらしく、苛ついたようにポケットから煙草を取り出して火をつけないまま口に銜えて正臣のことを睨みつけた。目には見えない火花を散らす正臣と千秋さん。

今日の昼間に初めて会ったらしいけど、なんでこんなに仲悪い感じなんだ、この二人。



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