公園に着くと、ベンチに腰掛けて煙草を吹かしている千秋をすぐに見つけた。
夜も遅いから小さな声で名前を呼べば、こっちに気付いたのか携帯灰皿に煙草を押し込める千秋。

「ごめん、お待たせ」
「いや。つーか、なんでコイツもいんの?」
「今まで一緒だったから連れて来た」

不思議そうにポチを見てから不躾に指を差す千秋のその手の甲をペチンと叩いて、俺が誘って連れて来たことを説明した。
俺が誘ったからとはいえ居た堪れないのか、小さく会釈をしつつも畏縮している。
千秋はというと、一瞬だけ眉根を寄せた気もするけど、それ以上は何も突っ込まずに口を開く。

「まぁいいや。……話ってのは、由香のことなんだけど。さっき由香に会った」

千秋の口から出たその名前に胸がチクリと痛む。

「幸福も会ったんだって?…由香から聞いた」
「ん。さっきコイツとコンビニ行ったとき声掛けられて」
「そうか。…で、由香から伝言頼まれた。お前に伝えるか悩んだけど、決めんのはお前だし伝えとく」

片手をポケットに突っ込んだままで面倒臭そうに頭をガシガシと強く掻く。
由香からの伝言って聞いて頭の中がぐるぐるしている俺の背中に急に何かが触れて、ビックリして振り向くと、優しく背中を摩ってくれているポチと目が合った。背中を摩ってくれる優しい手つきと同じように、優しく柔らかい笑いを浮かべるポチ。
年下のポチに慰められるみたいで俺って格好悪ぃな…とか思ったけど、少しだけ落ち着いた。

「あいつお前と話がしたいって、あんときのこと。だから、明日の九時にこの公園で待ってるって…。多分幸福から連絡来ないだろうからって、たまたま会ったついでに俺が伝言頼まれた」
「いまさら、何話せばいんだよ」
「わかんねぇけど…行く行かないはお前の自由だ。由香も、無理に来いとは言ってなかったしな」

奥歯をきつく噛み締めて、両手を拳を強く握る。

「ごめん。ちょっと……一人になりたい」

下を向いたまま小さく呟くとぐしゃぐしゃと髪の毛を掻き混ぜられて、千秋がポチに声を掛けたかと思ったら、二人の足音が遠ざかっていった。



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