「そうですか。……綺麗な人ですね」
「ん?あ、あぁ。まぁな」

そこでまた沈黙。
たった数秒静かになっただけなのに、雰囲気のせいで長時間に感じる。
時計の針が動く音がやけにでかく聞こえるな、なんてぼんやり考えてたら、ポチががばっと起き上がってベッドに寝転がっている俺を覗き込む。

「まだ…好きなんですか?」

真剣な眼差しで見つめられて不覚にも心臓が高鳴った。
由香のことを忘れられていなかったのは確かだけど、いまだに好きかと聞かれると微妙だ。
いや…少なくとも、さっきコンビニで会うまでは好きという感情は全くなかった。でも、今は自分の気持ちがわからない。

「まだ好きかって聞かれると、」

そこまで言って、この場の雰囲気にそぐわないお気楽な音楽が流れ出す。

会話が途切れて申し訳ないと思いながらも枕元に置いてあった携帯をとってディスプレイを確認すると、そこには加藤千秋の名前があった。

「ちょっとごめん……もしもし」

ポチがいるってこともあって控えめに電話に出る。
千秋は外にでもいるのか、携帯の向こうから車やら風の音も混じって聞こえてきた。

「ん、大丈夫。…うん、そう………わかった」

千秋からの電話に小さく頷く。
電話越しにぼそぼそと小さな声は聞こえているけど内容まではわからないポチは、電話を切った俺の顔をアホみたいに見ていた。

「…千秋からの呼び出し」
「あ、帰るんですか?」
「いや……沢、お前も一緒に来いよ」

あからさまに残念そうな顔になるポチが可愛くてちょっとだけ吹き出してしまう。
千秋からの呼び出しにポチも誘うと、まさか誘われると思ってもみなかったのか焦ったように視線をさ迷わせてから「はい」と一言返事をした。

もう寝る準備万端だった俺たちはそそくさと着替えて待ち合わせ場所の公園へと赴く。
待ち合わせ場所に行くまでの間は、さっきポチの家でしていた重苦しい会話とは裏腹にくだらない話で盛り上がった。



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