ポチの自宅に帰ってきてからのことはあんまりよく覚えていない。
他愛ない雑談をしながら早々に飯を食って、それから、疲れただろうからってポチがベッドを譲ってくれた。ポチはというと、ベッドの隣に来客用の布団をしいて寝ている。

疲れているはずなのに中々寝付けなくて何回か寝返りを打つ。
仰向けになって顔の半分まで掛け布団を引っ張ってくると、すごくポチの匂いがした。

「…起きてる?」

どうしても眠れなくて小さい声で話し掛ける。
声を掛けてから少しの間を開けると、もぞもぞと動いて布団から顔を出したポチがこっちを見る。

「眠れないんですか?」
「あー…まぁな。ごめん、もしかして起こしたか?」
「いや。まだ寝てませんでした」
「……そう」

優しく笑いかけてくれると、なんか知らないけど俺の心も落ち着いていく。

「鳴海さん。…好きです」
「なんだよ急に」
「なんとなく言いたくなっちゃって、すみません」

真っ暗で布団に潜った状態で何言ってんだ。
ムードもへったくれもあったもんじゃねえ。いや、そもそも俺らの間にムードなんてあったことないけど。

「なんかさ…聞きたいこととかある?」

自分でもなんでこんなことを言い出したのかわかんないけど、いっつも行き当たりばったりに全力で接してくるポチに、俺も素直に腹割って話したいとか思って口をついて出た言葉だった。

「鳴海さんこそ、なんですか急に」
「俺もなんとなくだよ。…で、なんかねぇの?なんでもいいよ、聞いて」

最初は冗談ぽく、でも今度は自然と声のトーンが低くなって真剣なこと伝える。
暗くてポチの顔は見えないけど、声と雰囲気でわかったらしい。

「あ…さっきの、綺麗な人。誰、ですか?」

なんでも聞いていいって言ったのに、質問してくるポチの声は不安そうで今にも消え入ってしまいそうだ。
多分聞かれるであろうなと想像していた質問と全く同じ質問がきて、少しだけ笑いを零す。

「あいつ、元カノなんだ。…結婚を前提に付き合ってた」

布団をぎゅっと握って心を落ち着けながら教えてあげる。



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