解放されてからチラリとポチの顔を盗み見れば、相変わらずへらへらしている。

「うわっ、思ったより濡れてる」
「当たり前だろ」

自分の服の裾を引っ張ってまじまじと見たポチが、予想より濡れたTシャツに驚く。
だから濡れるって忠告してやったのに…。

びしょびしょになってしまった自分のTシャツを眺めて何かを考えていたのかと思えば、唐突にTシャツを脱いで上半身を剥き出しにする。

「ちょ、何してんの」
「何って…このままじゃ風邪引くかなって思ったんで」
「あぁ…そう」
「なになに?意外と引き締まってる身体に見惚れちゃいましたか?」

確かに、意外に引き締まっていい身体してるな、とは思ったけど別に見惚れていた訳ではないし、ポチ相手にからかわれたように言われて悔しいから軽く頭を叩いてやった。
大して痛くもないだろうに、大袈裟に痛がるようにして頭を摩るポチ。

「ヒドイなぁ」
「お前が馬鹿みたいなこと言うからだろ」
「……鳴海さん。あのさ、いっこ聞いていい?」

いきなり声のトーンを変えて首を傾げたポチに対し、目でなんだと返事をしてやる。

「俺と付き合うの、試しって言ってたじゃないですか?その、試した結果とか、聞きたいな〜なんて思ったりして」

可愛さの欠片もない上目遣いをしながら遠慮がちに俺の反応を窺う。
ポチの聞いてきたことに、俺はなんて答えればいいかわかんなくなってしまって湯舟に顔の半分を沈めてぶくぶくと泡をつくった。

「やっぱし、無理とか…してました?」

眉間に皺を寄せて嘘っぽい笑顔のポチがなんとも痛々しい。
んでもって痛々しくさせているのが自分だと思うと、居た堪れないというかむしゃくしゃするというか…釈然としない。

「無理、してない」
「なら良かった。一週間しか経ってないのになんか焦っちゃって、すみません」
「ん。……でも、きちんと答え、出すから」

柄にもなく小声でそう告げると、ポチは優しく微笑んで頷いた。



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