「鳴海さんの嫌がることはもうしません」
俺の指先を自分の唇に合わせた状態のままでそう断言された。
しゅんと項垂れたようにしているポチの姿に、掴まれている手とは逆の手をその金髪へと伸ばしてぐしゃぐしゃと掻き混ぜてやる。雑に撫で回すと、刈り上げている部分がたまに指先を掠めてくすぐったい。
「いたた…鳴海さっ、乱暴にしないで下さい」
「うるさい、さっきの仕返しだ馬鹿」
少しだけ頭を撫でられて嬉しそうにしているポチにイラッときて、これでもかと言わんばかりに力を込めて掻き乱したらその手もガッシリと捕えられてしまった。
「意地悪しないで下さい」
「…さっきのお前のが酷いだろ」
「俺は意地悪なんかしてません」
無自覚とか質悪ィ。人のこと散々責め立てたくせに、よくもいけしゃあしゃあと。
ヘタレで犬っぽい奴だと思っていたけど、実際は天然腹黒サド野郎だ。
なんてことを考えている間中、あまりにも真っ直ぐ目を見てくるもんだから居心地が悪くて目を逸らす。
「…鳴海さん」
なんとなくキスをされてしまいそうな雰囲気だったから目を逸らしたというのに、熱っぽい声で呼ばれて顔を上げてしまったのが間違いだった。
「ん、う…ン」
ポチの顔が近付いてきて自然と目を閉じて少しだけ唇を突き出してしまえば、当たり前のように合わさる俺とポチの唇。
軽く触れ合うだけのキスを数回繰り返していると、すごく恥ずかしいことをしているような気がして、ポチの胸板を押して引きはがした。
「も、しつけえ」
「すみません。鳴海さんとするキス気持ち良くて…つい夢中になっちゃいました」
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