縦横無尽に口の中をポチの舌が這い纏わったあと、どちらのものかわからない涎が糸を引きながら唇が離れていく。
お互いに荒い呼吸を繰り返しながら無言の状態が続いた。

「…どけ」

なんだか居た堪れなくなった俺は、人の上に乗っかったままもう一度キスをしてこようとしたポチの胸板を肘で押し退ける。

「帰る」
「鳴海さん、なんか怒ってますか?ごめんなさいっ」

さっきまで意地悪く人を責め立てていた人間が何言ってんだ。
こっちは、てめぇの所為でいい歳して下着ん中で射精してんだぞ?しかも、そこを触られてもないのに。

…なんて、自分のプライドが邪魔をして言えるはずもなく、まるで別人になったかのように立ち上がろうとする俺の手を掴んで謝ってくるポチを睨むしか出来ない。

「ほんと…離せって」
「…嫌です。鳴海さん、下着気持ち悪くありませんか?」
「んなっ!」

真顔でそこを指摘されて顔がカッと熱くなる。
湿ったままの下半身を我慢していた手前、真面目な面持ちで聞いてきたポチに腹が立った。

「お前ふざけんな!誰のせいでこんなんなったと」
「俺です。俺のせい、ですよね」
「…お前、ムカつく」

下を向いて自分の髪をぐしゃりと掴むと、そっと頭に近付いてくる細く骨張った指。髪の毛を掴んでいた俺の指に自分の絡めると、そのまま引っ張られて指先にキスを落とされた。

何回も指先にだけキスを繰り返されて、その指を引っ込めることも出来ない俺はどうすればいいかわからずに往生する。


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