「鳴海さん、沢と付き合ってんだって?」

あたかもずっと一緒に居たかのように会話を切り出す九条に、俺も千秋も、他所へ行けよ、なんて言い出せなくなってしまう。
ハンバーガーに齧り付いている姿すらカッコイイ九条に嫉妬の念を抱きつつも、その質問に小さく頷いた。

「俺、鳴海さんはノンケだと思ってた」
「いや…ノンケだけど」

人もたくさんいる昼間のファストフード店で話すことじゃないな、って思ったら、自然と語尾が弱まっていく。

つーか、なんでコイツとこんな会話しなきゃなんないんだよ!

イライラしていると、目が合った九条がふわりと微笑んだ。
なんだか、その余裕な態度に自分が子供のようでさらにイライラが増す。

「鳴海さん。沢のこと幸せにしてやってね」
「なんで俺がっ」
「あいつ、多分初恋だと思うんだよね」

その台詞に、言葉通り開いた口が塞がらない。
九条の隣にいる千秋に目を向けると、千秋も同じように驚きを隠せないようだった。

「…嘘だろ?」
「いや。今までも彼女とか作ったりしてたけど、鳴海さんといるときと比べてみると態度が全然違うし」
「今までと態度違うからって初恋とは限んないだろ」
「ん〜…でも、初恋だよ」

九条がそこまで言い切れる意味がわからない。
なんの根拠があって言うんだ。
第一、俺とあいつが付き合ってるのはあくまで試しであって…本気じゃない。

「ま、とりあえず、例え沢が大事にしてる鳴海さんでも、沢を泣かしたら俺、許さねぇから」
「じゃ、その結果幸福を泣かしたら俺はお前を許さない」

俺が反論出来なくなっていたら、いつの間にか千秋と九条の間に火花が散っている。



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