「…ありがと」
「お前本当にわかってんのかよ」
「うん」
「馬鹿。そんな顔すんな」

可笑しな顔でもしていたのだろうか、困ったように笑う千秋に小突かれた。

「あれ?鳴海さん?」

不意に名前を呼ばれて、聞き覚えのある声のした方に顔を向ける。
知り合いと同じ名前だったからか、ストローを噛んでいた千秋も反射的に声のした方へと目を向けていた。

「誰?」

俺が声を出すよりもまず先に、千秋が不躾にも指を差す。
そいつは手に持っていた物を俺らの隣のテーブルに置いて、指を差す千秋の手を両手でギュッと握った。

「初めまして。俺、鳴海さんの知り合いの九条正臣っていいます」
「いや、ちょ、手…」

あからさまに嫌そうな顔をする千秋に対し、楽しそうにニコニコと微笑む九条。

「俺の知り合いっつーか、ポチのだろ」

手を握られて困惑気味の千秋はとりあえず無視して、九条の自己紹介に軽くツッコミを入れる。
俺の一言に不適な笑みを浮かべた九条は千秋の手を離した。

「言ったでしょ。沢の知り合いには手ぇ出さないって」

そうか…。
つまり、裏を返せば俺の知り合いには手ぇ出すってことだな。

コイツは常識人だと思っていたのに、とんだ思い違いだった。
千秋も怪しい奴だと感じたのか、なんだか警戒しているように九条を見ている。
そんな九条は、自分が警戒されているのを知ってか知らずか、隣の席に置いてあった筈のトレーを俺らのいるテーブルへと置いてナチュラルに千秋の隣の椅子へ腰掛けた。



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