「…で、付き合ってんだ?」
「うん」
あれから丁度一週間が経った。あれから…というのは、もちろん俺とポチが“試し”に付き合うことになった日。
もう中身が入っていないのか、片手で紙コップを持ちながらストローを噛む千秋。
仕事の休みが重なった千秋が飯を奢ってくれると言うからわざわざ休みの日に出てきてやったというのに、結局ファーストフードだし。
大口を開けてハンバーガーを頬張っている俺を小馬鹿にしたような表情で見ていたと思ったら、盛大に溜息を吐いてデコピンしてきた。
「んぐっ」
口一杯にハンバーガーを詰め込んでいたせいか、痛くてもくぐもった声しか出せない。
喉に詰まりそうになったものをジュースで流し込んでから、飄々としている千秋を睨みつける。
「何すんだよ」
「幸福。流されやすすぎ」
「だって、」
「何?お前、アイツのこと好きになったの?…どうせ、お願いされて断りきれなかったんだろ」
悔しいけど言い返せない。
ポチのことは、嫌いって訳じゃない。でも、恋愛感情で好きか、って聞かれると肯定もできない。
それ以前に、俺は、
「もう人を好きになるつもりなんかない」
思わず片手に持っていた紙コップを握り締めてストローから少し中身が飛び出した。
慌てて手を離して零したジュースを紙ナプキンで拭いていると、千秋が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「もうアイツに会わない方いいんじゃない?」
「それは」
「俺はさ!幸福には幸せになって欲しいんだよ」
照れたようにそう言う千秋は、組んでいた長い脚を組み替えてガシガシと頭を掻き乱した。
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