陽気に鼻歌なんか歌いながら一歩前を歩くポチの背中をまじまじと見つめる。

初めて会ったときとか今まで話していたときは、細くてひょろひょろした奴だな、なんて思ってたけど、改めて後ろから見ると意外にも背中が広い。

「鳴海さん…隣」

くるりと振り向いたポチがそう言って自分の横を指差す。これは、暗に隣を歩けということだろうか。
遠慮がちにポチの隣に並ぶと、阿呆みたいに笑顔になった。

つーか、付き合うって言ったって何すりゃあいいんだ?
男同士ですることもねぇだろ。

「何考えてるんですか?」
「あ、いや…何も」

適当に答えた俺に対してポチは嬉しそうに歯を出して子供みたいな笑みを浮かべた。
緩んだ笑顔のまんま前を向くポチを少しだけ盗み見してみようと目を向ける。

「わっ!前、向いたんじゃないのかよ」

さりげなく盗み見するつもりが、バッチリと目が合ってしまってなんとなくバツが悪い。盗み見されるなんていい気分じゃないだろう。
なんだか異様に恥ずかしくなってきて右手の甲で自分の口を隠した。
キョトンとしていた筈のポチが、口を隠していた俺の右手を取ってその細く骨張った左手で優しく包み込む。

「…行きましょう」

俺の手を引いて何も言わずに歩き出すポチ。
夕暮れ時で本当に良かった。
頬が熱くなるのを感じながら、人のいない住宅街を男と手を繋いで歩く。



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